〈新型コロナワクチン〉4回目接種は有効?「接種対象が大幅に減った」のはなぜか【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現状、4回目接種の対象は「60歳以上の方」「18歳以上60歳未満で基礎疾患を有する方・重症化リスクが高いと医師が認める方」に限られており、さらに言えば「努力義務」(「接種を受けるよう努めなければならない」という予防接種法上の規定)が適用されるのは前者の「60歳以上の方」のみとなっている。接種対象者がかなり絞られたが、それでは接種対象外となった人々にとってワクチンは“無用”なのだろうか? 海外のコロナ対策の状況を見つつ、考えていこう。

4回目接種、日本は「対象者・非対象者」を峻別したが

5月25日から、60歳以上や重症化リスクが高い人を対象としたコロナワクチンの4回目接種が始まった。実は、我が国の4回目接種は問題だらけだ。本稿で論じたい。

 

まずは、その基本姿勢だ。厚労省が追加接種の対象を60歳以上や重症化リスクが高い人に限定したことこそ、我が国のコロナ対策の問題を象徴している。それは国民より国家の都合を優先しているからだ。どういうことだろうか。

 

注目すべきは、米政権医療顧問トップのアンソニー・ファウチ国立アレルギー感染症研究所長の発言だ。4月10日、ABCの番組「This Week」に出演した際、「コロナは根絶できるものではない」、「各人が自分がどの程度のリスクを負うか考えて行動すべきだ」と発言した。これは、従来のコロナ対策の方向転換を意味する。

 

権威ある米『ニューイングランド医学誌』も、4月28日の社説で「失敗を意味する『ブレークスルー』という言葉は、非現実的な期待を生み、このウイルスに対するゼロ・トレランス戦略の採用につながった。パンデミックからエンデミックに移行するためには、ある時点で、ワクチン接種または自然感染、あるいはその2つの組み合わせでは軽症に対する長期的な予防ができないことを受け入れなければならない」と総括している。

 

今春、米国では、コロナを撲滅することはできず、うまく付き合っていくしかないと割り切ることが社会的なコンセンサスとなった。だからこそ、この時期に公共交通機関などでのマスク規制の緩和などが急速に進んだ。筆者は、この対応は合理的と考える。

 

ウィズ・コロナを目指すとすれば、どこまで感染予防を徹底するかは、個人の価値観によらざるを得ない。政府は一律に規定できず、政府の仕事は、正確な情報を国民に提供し、国民の判断をサポートすることになる。

現状、4回目接種の効果は?

では、ウィズ・コロナの世界で、4回目接種はどうすればいいだろう。まず、認識すべきは、現時点で、4回目接種についてのデータは限られていることだ。医学的なコンセンサスは形成されておらず、これまでに発表されたデータを用いて、総合的に判断するしかない。

 

その際、最も重視すべきは、4月13日にイスラエルの研究チームが、米『ニューイングランド医学誌』に発表したものだ。この研究では、60歳以上の高齢者に対して、4回目接種を行った。3回接種群と比べ、接種後7~30日間の感染リスクは45%、入院リスクは68%、死亡リスクは74%低下していた。4回目接種は有効だ。

 

さらに、5月9日には英国の研究チームが、4回目接種を受けた166人を対象に抗体価や細胞性免疫を評価し、いずれも上昇していたと英『ランセット感染症版』に報告している。実際に感染や重症化を予防したことを証明したわけではないが、4回目接種の有効性を支持する結果だ。

 

では、4回目接種の問題は何だろうか。それは、予防効果の持続が短いことだ。イスラエルの報告では、感染予防効果は、接種後8週間時点では、約10%まで低下していた。この研究の観察期間は短く、重症化や死亡の予防効果も、同様に減衰するのかはわからない。ただ、4回目接種には過大な期待を寄せないほうがよさそうだ。

 

もし、効果の持続が短いのなら、接種時期は流行直前がいい。幸い、コロナの流行には季節性があり、ある程度予想可能だ。2月20日、米CNNが『新型コロナワクチンの4回目接種、秋以降に推奨の可能性も 米』という記事を配信しているのは、このあたりを加味したものだ。日本は夏前に4回目の接種に加え、冬の本格流行の前に5回目接種の準備をしているのだろうか。このあたり、厚労省は国民に説明すべきだ。

「重症化リスクの高い人だけ」が接種しても不十分

もう一つの問題は若年者への接種だ。前述したように、日本は4回目接種を60歳以上の高齢者や持病を有する人に限定している。私は、これはいただけないと考えている。1月26日に4回目接種の対象を18歳以上に拡大したイスラエルとは対照的だ。どちらが適切だろうか。

 

国民視点に立てば、結論は明らかだ。高齢者や持病を有する人にワクチンを打つだけでは不十分だからだ。中国の上海の大規模検査の結果によれば、オミクロン株の感染者の95%は無症状だ。多くの感染者は普通に行動する。そして、周囲に感染を拡大させる。高齢者や持病を有する人と接触する機会が多い同居者や医療・介護従事者にもワクチンを打たなければ、彼らを介して感染させてしまう。高齢者や持病を有する人の感染リスクを減らすという点で、イスラエルの対応のほうが優れている。

「60歳未満の健康な人」に4回目接種は「無用」か?

なぜ、我が国は4回目接種の対象を拡大しないのだろうか。厚労省は、「エビデンスがないという主張を繰り返している(政府関係者)」が、この対応は不誠実だ。医学的に「エビデンスがない」ことは、無効であることを意味しない。これまでのコロナワクチン研究を考慮すれば、高齢者と若年成人の間で安全性・有効性が大きく異なるとは考えづらく、高齢者には4回目接種を推奨するが、若年成人には接種の機会さえ与えないことを支持する医学的合理性はない。

 

コロナワクチンの臨床開発をリードしてきたのはイスラエルだ。同国では若年者の4回目接種が進んでいる。早晩、若年者を対象とした4回目接種についてエビデンスが発表されるだろう。厚労省は、このあたりどう説明するのだろうか。

 

幸い、我が国にワクチンは余っている。その気になれば、希望する若年者に接種機会を提供できる。4回目接種のあり方は、海外での接種状況を参考に、国民視点に立った柔軟な対応が必要だ。

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所 理事長

 

 

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内科医
医療ガバナンス研究所 理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)、『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)など。

著者紹介

連載現役医師が緊急レポート!新型コロナ感染拡大の現状

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。

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