岸田総理も「重ねてのお願い」…コロナ第7波、「追加接種」の効果はどれくらい?【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

オミクロン株は毒性が低く、罹患しても重症化リスクは低い。しかし、自分や周囲の人々を守るには、追加接種が重要だ。岸田総理も、7月18日の会見で「若い世代の皆さんには、ワクチン3回目の接種を、重ねてお願いいたします」とコメントした。第7波における追加接種の効果について見ていこう。

コロナ第7波、8月中旬までが正念場か

新型コロナウイルスの第7波が拡大している。この時期に感染が拡大するのは、昨年、一昨年と同じだ。過去2年とも8月に感染はピークとなり、その後、減少に転じた。

 

ただ、今夏の流行は、過去2年とは様子が違う。【図表】は、今夏の欧州と日本の感染者数の推移を示す。日本は、すでに今冬のピークを越えている。

 

出所: Johns Hopkins University CSSE COVID-19 Data, Our World In Data
【図表】欧州と日本の感染者数の推移 出所: Johns Hopkins University CSSE COVID-19 Data, Our World In Data

 

日本より約1ヵ月、感染拡大が早かった欧州では、7月11日をピークに感染者は減少している。過去の流行でも、日本は欧州から1ヵ月ほど遅れることが多かった。今後、3~4週間が正念場だ。

感染力は強いが、毒性は弱い。ワクチンも有効

第7波対策で重要なことは何か。まずは、高齢者の命を守ることだ。ただ、それはあまり心配しなくてもよさそうだ。今回の欧州での致死率は0.2%程度で安定している。昨夏のデルタ株の流行では、最大で約2%まで上昇したのとは対照的だ。今回の流行の主体であるオミクロン株BA.5型は、これまでのオミクロン株と同様に感染力は強いものの、毒性は弱いと言ってよさそうだ。

 

ワクチンにも期待が持てる。オミクロン株BA.5型に対するワクチンの効果は、まだ十分に検証されていないが、オミクロン株BA.1/2型については、ある程度の情報が蓄積されている。

 

7月6日、カナダのオンタリオ州の公衆衛生局の研究チームが、高齢者施設の入居者に4回目接種を行うことで、感染を49%、症候性感染を69%、重症化を86%予防するとの研究結果を『英国医師会誌(BMJ)』に発表した。追加接種は、オミクロン株の感染および重症化予防に効果が期待できそうだ。

 

さらに、6月18日には、英キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームが、オミクロン株感染後の後遺症の頻度は4.5%で、デルタ株(10.8%)の半分以下であるとの研究成果を英『ランセット』誌に発表した。

 

オミクロン株は、感染力は強いものの、毒性は弱く、後遺症の頻度も少ない。さらにワクチンも有効だ。7月14日、政府のコロナ感染症対策分科会は、検査体制の強化やワクチンの追加接種を推奨するものの、これまでの流行のように行動制限は求めない方針を示した。時宜を得た提言だ。

感染拡大中の「若年者」は3回目接種率が低い

ただ、我が国のコロナ対策には、大きな欠点がある。それは若年者の対策だ。オミクロン株対策で重視すべきは、若年者対策だ。東京都によれば、7月20日、2万401人の感染が確認されたが、このうち1万2,092人(59.2%)は30代以下だった。ところが、この世代に対する対策は不十分だ。

 

まずは、ワクチン接種だ。7月19日現在、3回目接種を終えた割合は20歳代が46.9%、12~19歳が32.4%だ。70歳以上では90%以上が3回目接種を終えているのとは対照的だ。若年者で感染が拡大するのは、この世代がワクチンを打っていないからだ。

 

若年者に対するワクチンの効果は高そうだ。6月16日、福島県相馬市が発表した調査結果が興味深い。相馬市はワクチン接種が全国で最も迅速に進んでいる自治体の一つだ。6月15日現在、中高生1,834人中1,066人(58.1%)が3回目接種を終えている。全国平均(27.1%)の約2倍だ。

「重症化しないから接種不要」と考えるのは尚早

相馬市によれば、4月1日から6月15日のオミクロン株流行期間(BA.4/5を含む)に中高生65人が感染しているが、3回目接種完了者、未完了者の感染率は0.67%、7.16%だった。3回目接種により、感染を91%予防したことになる。この事実は、もっと啓蒙すべきだ。

 

若年者は、コロナに感染しても重症化しないが、コロナに感染すると、入院、施設、あるいは自宅での療養が求められ、機会損失を蒙(こうむ)るからだ。その期間は、症状があれば発症から10日間、無症状なら陽性確認から1週間だ。この間、活動が制約される。

 

酷いケースでは、コロナに罹ると、大学を留年しかねない。たとえば、東京大学は、今年度の前期試験より、コロナ感染者に対する追試を廃止している。必修科目のテストが受けられず、追試も認められなければ、自動的に留年だ。

 

これは違法とも言える対応だ。コロナ感染で入院や自宅療養が求められるのは、感染症法に基づく法的措置だ。その目的は、感染を拡大させないための防疫だ。だからこそ、軽症や無症状者にも適応される。国家の防疫のために、国民に犠牲を強いるのだから、国家は機会損失の被害を被った人を救済する義務がある。

 

ところが、東京大学に、そのつもりはない。同大学は、追試を取りやめた理由として、保健所機能が圧迫され、「実質的に学生からの申し出のみによる審査・決定となり、審査の信頼性が担保できない状況となった」と説明している。

 

もちろん、政府も、このことは認識している。文部科学省は、「学生一人一人の立場に立って、きめ細かな対応」、「不安の中にある学生に寄り添った対応」、「判断の理由や根拠も含めて学生一人一人に伝え、学生の理解を得るよう努めること」を求める通知を各大学に出しているが、説得力がない。

 

それは、文科省自体が「学生一人一人の立場に立って、きめ細かな対応」を放棄しているからだ。たとえば、教員職員免許法に基づいて文科省が実施する教員資格認定試験の令和4年度の受験要項には、発熱や倦怠感などのコロナ感染を示唆する症状、および濃厚接触者、自宅待機者を挙げ、「以下に該当する場合は、受験を見合わせてください。これらを理由とした欠席者向けの再試験は実施しません」と記されている。

 

この状況は、感染症法を所管する厚労省も変わらない。同省は医師国家試験など22の国家資格試験を実施しているが、入院中、宿泊または自宅療養中、一部の濃厚接触者の受験は認めず、再試験も実施していない。厚労省は、その理由として、NHKの取材に対し、「短期間で追試の問題を作成するのは困難だ。広く機会を与える観点から柔軟な形で行われている大学入試などとは異なり、(医療関係職種の国家試験では)従来から心身の不調を理由とした追試は実施していない」と説明している。コロナと「心身の不調」を一緒に、議論していることには呆れざるを得ない。要は面倒臭いことはしたくないと言っているだけだ。こんな無責任なことはない。

 

これが我が国のコロナ対策の実態だ。オミクロン株の毒性は低く、罹患してもたいしたことはない。その意味で、今回の流行について大騒ぎすべきではない。ただ、松野官房長官が、7月13日の記者会見で「(コロナを5類に変更することを)現実的でない」と発言しており、感染者・濃厚接触者が不利益を蒙る状況は、当面変わらない。今夏、我が身は自分で守るしかない。とりあえずは、追加接種をおすすめしたい。

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所 理事長

 

 

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内科医
医療ガバナンス研究所 理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)、『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)など。

著者紹介

連載現役医師が緊急レポート!新型コロナ感染拡大の現状

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。

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