本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです(取材日:5月18日)。4~5月のリート動向と今後の見通しについて、中村氏が解説します。
引き続きホテル特化型REITが堅調
セクター動向において、当期間はホテル特化型REITや住居特化型REITなどが上昇した一方、物流施設特化型REIT、オフィスビル特化型REIT、商業施設特化型REITなどが下落した。
先行きの経済正常化期待を背景に、いちごホテルREIT投資法人(3463)、星野リゾート・REIT投資法人(3287)、ジャパン・ホテル・REIT投資法人(8985)などが堅調に推移した[図表5~10]。
その他トピックス
グローバルREITの2022年初から5月17日までの騰落率[トータルリターン:図表11]をみると、長期金利の上昇やウクライナ情勢等が嫌気され、欧米豪REITは10%を超える大幅下落となった。
一方、J-REITやシンガポールREITなどはイールドスプレッド面での割安感や過去(ヒストリカルデータ)のボラティリティの相対的な低さ(欧米豪REITと比較)などがグローバル投資家の選好を強め、底堅い推移となっているようだ(とはいえ、ドル円も12.4%の円安ドル高となっており、ドルベースでみたJ-REIT投資のパフォーマンスは米国REITに若干劣後している)。
年後半にかけてのグローバルREITの投資環境に不透明感が残るなか(①長期金利の上昇、②地政学リスク、③グローバル景気の落ち込み等)、国内の経済正常化の動き(Go toや水際対策の緩和などの政策を含む)とともに7月の参院選に向け日本市場のモメンタムの強さが期待できるとみられ、J-REITは今後も底堅く推移する可能性があろう。
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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