中学2年生の17人に1人…社会から孤立する「ヤングケアラー」の実態【在宅医療医の解説】

中学2年生の17人に1人…社会から孤立する「ヤングケアラー」の実態【在宅医療医の解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

病気や障害のある家族の介護に忙殺され、教育を受けられない、同世代との人間関係を構築できない子どもたちである「ヤングケアラー」。社会問題化しているものの、医療法人あい友会理事長の野末睦医師は「在宅医療の現場ではそれほどヤングケアラーの存在を感じない。それだけヤングケアラーは孤独の戦いを強いられているのだろう」と話します。いま私たちが考えるべき「ヤングケアラー」の問題についてみていきます。

孤独な介護現場で奮闘する「ヤングケアラー」の典型例

このような、孤独な戦いの介護現場。そうなってしまう典型的な状況を、ふたつほどお話ししたいと思います。一つ目は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病で、人工呼吸器が装着され、身体の動きのみならず、周囲との意思疎通さえも難しくなってきたような患者さんとその家族の場合です。

 

一般的には、このような状況では、病院での療養がふさわしいように思われますが、看護師などのスタッフが多い、いわゆる急性期病棟への長期入院は原則的には不可能です。また慢性期の患者さんが入院する病棟への入院や、施設への入所は、長期間療養できるという点ではいいですが、断続的に続く吸引や体位変換などの医療的処置や、困難な意思疎通を、慣れながら、時間をかけながら行っていく余裕はないことなどから、やはりかなり困難です。

 

結局、患者さんの配偶者や、親などが、自宅に患者さんを引き取って、ひとりで24時間、365日、満足に睡眠を取ることもできずにケアラーとして活躍していくのです。

 

このような患者さんとその家族は、筆者たちの患者さんの中にも数名います。そして、このようなケアラーは、患者さんの療養場面において、本当に細かなところまで、まさに痒い所に手が届く介護を提供できるので、レスパイト入院や、短期間の施設入所もできなくなってしまいます。人数的にも、また「慣れ」の面でも、ケアラーが提供する高いレベルのケアができないからです。こうなると、まさに悪循環になっていき、自宅でのケアラーの戦いから抜け出せなくなってしまうのです。

 

ヤングケアラーとの違いは、社会的なサポートを受けるための、知識や金銭的な面も含めた社会的地位が高い場合が多く、不十分ながらも訪問診療を始めとする、社会的支援をお届けすることができるということです。

 

もう一つの典型的な状況は、いわゆる老老介護など、かなり社会的に孤立した状況で、金銭的、あるいは精神的な問題を抱えていて、周囲からのサポートを受けることができなかったり、受けることを拒否したりするケースです。このような患者さんとその家族は本当に多くみられます。地域包括ケアセンターなどの行政側から紹介されてくることもあります。つまり病院受診などもしていない場合が多いということです。

 

日本は福祉国家だと、本当に思い、感じています。でも、このように、ヤングケアラーのみならず、成人したケアラーのなかにも、孤独で、自由がまったくない状況で、眠ることもままならない人たちがいることも事実です。

 

これらの解決には、筆者たち医療従事者だけの工夫や頑張りではどうしようもなく、広く日本人全体でのトライが必要です。どうかみなさん、このような問題に少しでも関心を持っていただけたらと思います。明日は我が身かもしれませんので。

 

 

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