中国の経済対策発表も株価は軟調
ハンセン指数 20,112.10 pt (▲1.75%)
中国本土株指数 6,883.14 pt (▲1.98%)
レッドチップ指数 3,832.79 pt (▲1.74%)
売買代金1,136億4百万HK$(前日1,051億3百万HK$)
24日の香港株式市場は下落し、ハンセン指数は前営業日比1.75%安で2日続落となった。朝方は、中国国務院が発表した経済対策の効果に期待した買いで、同指数はプラス圏に浮上していたが、後場に入ると時間外取引で米国株先物の下落が逆風となり、ハイテク株主導で値を下げ、売りの勢いが増し、軟調なまま下げ幅を拡大した。
米ナスダック100先物はアジア時間の取引で、前日終値から2%近く下落し、年初来安値の水準をつけた。デジタル銘柄の比重が高いハンセンテック指数は前日比3.48%安となり、構成する30銘柄が全面安となった。
目立ったところでは中国EVメーカーの小鵬汽車(9868)が前日比9%安だった。前日に発表した、1-3月期決算で赤字が拡大したことが嫌気され、EV同業種銘柄にも売りが広がった。動画配信のビリビリ(9626)、電子商取引の美団(3690)、Eコマースの京東集団(9618)も軟調な展開で前日比5%強下げた。
一方、中国政府の経済対策により自動車購入税引き下げの恩恵を受ける自動車の吉利汽車(175)が前日比3.5%上昇。前日に、米国で金融株が上昇したことからHSBC(0005)やスタンダードチャータード銀行(2888)などの銀行株は前日比2%近く上昇した。
中国は経済対策を発表
中国国営中央テレビ(CCTV)が23日報道したところによると、中国国務院は、李克強首相が主催した常務委員会議を開催し、経済対策パッケージを導入することを決定した。
国務院は、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策にともない、中国経済への下押し圧力は増大し続け、多くの企業などにとって非常に厳しい状況になっているとの認識を示し、経済活動を正常な軌道に戻すために6分野33項目に及ぶ景気安定化策を実施するという。
財政政策としては、税還付を受けられる業種を増やし、年間の減税・税還付の規模を2.5兆億元から1,400億元(約2兆6600億円)上積みして2.64兆元に増額する。中小零細企業や個人事業主、一部業況が悪化した業種に認めていた年金掛け金などの社会保険料の納付も年内は猶予する。乗用車購入税も600億元減税する。
金融政策では零細企業向け融資を増額する。小規模事業主の借り入れやゼロコロナ政策による物流混乱の打撃を受けた運送会社などが持つトラックのローン、個人向けの自動車ローンについて、市中銀行に対して年内の元利払いを猶予するよう補助する。また、農村部での灌漑事業や老朽化した住宅街の改築のための長期融資を市中銀行に推奨する。
他には、サプライチェーンや物流の回復を支援するため、国内外の旅客便を増やす措置をとるという。
相次ぐ中国経済成長率の下方修正予想
UBSとJPモルガンは24日、2022年の中国経済の成長率予想を下方修正した。ゼロコロナ政策による制限措置で4月の活動が急減速したことを反映したことが主な理由である。UBSは、予想成長率を前回の前年比4.2%から同3.0%に引き下げた。中国経済が今年第3四半期と第4四半期には回復する可能性が高いとしつつも、ゼロコロナ政策を堅持して、行動規制は緩和されないことを見越した。
4-6月の第二四半期のGDPについては前年同期比1.4%増、前期比では年率8.0%減に落ち込むとの厳しい予想である。同様の理由から、JPモルガンは、中国経済の成長率予想を前年比4.3%から同3.7%に下方修正したと発表した。
中国経済のGDP成長率については、下方修正が相次いでいる。先週19日には、スタンダードチャータード銀行が、年率5.0%としていた予想を同4.1%に引き下げていた。
23日の中国の感染者数は639人、上海の感染者数は478人と500人を下回った。上海市金山区は、25日から自家用車の走行を許可するなど、一部では規制緩和が始まりつつある。中国の感染者は減少傾向にあるが、新型コロナウイルス感染対策の行動抑制長期化により、中国経済の正常化には時間がかかるとの見方が引き続き株価の重しとなっている。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>