(※写真はイメージです/PIXTA)

競争力のあるクリニックを作るには、どうすればよいのでしょうか? 老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)より、クリニックにおける「特徴・ウリの創出」について解説します。

開業医の将来像を見据えた「ウリ」の創出

医療の近未来像は患者数の減少、保険診療の縮小、在宅医療の拡大が予測されます。さらにコロナ禍によって、プライマリ・ケアと慢性疾患治療のセルフメディケーション化が進む可能性があります。そのため、次のような戦略が考えられます。

 

<①在宅医療と高齢者向けの保険外サービス>

2050年頃まで高齢者人口は増え続けます。高齢者をターゲットにした事業展開を目指すべきという論理は誰が考えても成立します。しかし、保険診療でその恩恵を享受できると考えるのは危険だと私は思っています。公的保険制度はそれほど気前よくお金を出すだけの財力がないからです。高齢者の財布のひもは固く、10年後、20年後には今ほど資金力もありません。それでも健康は最大の関心事ですし、消費の中核をなすのは高齢者でしょう。

 

ここから導き出されるのは、高齢者への在宅医療サービスとそれに紐づけた保険外サービスの提供です。たとえば、買い物代行、病院送迎、生活必需品の宅配などの保険外サービスを行う会社を別に立ち上げます。さらにサブスクリプションで、月々1万円で1万円を超えるオムツや商品などを提供し、月2回まで送迎サービスが利用できるようにすれば、少し表現は悪いのですが、消費者としての高齢者を丸抱えできる可能性はあるでしょう。

 

ただ、在宅医療の診療報酬は減額の一途をたどることが予想され、効率化や大型化が避けられなくなります。1つの都道府県に数件程度の大型化や、法制をクリアできれば全国ネットのフランチャイズなどが成立するかもしれません。大型化で勝ち組に残る側はごく少数ですから、急激な大型化に耐え得る経営手腕を持つ人が勝ち組に残ります。

 

<②専門的な臨床と関連領域の保険外サービス>

開業医が今後ウリにできるものとしては、専門的な診療とそれに関連づけた保険外事業をあわせて行うことが考えられます。たとえば、嚥下障害を専門に扱う診療を行います。現時点において嚥下障害のリハビリで診療報酬を得るのは開業医にとってハードルが高くなっていますが、嚥下機能がそれほど悪くない高齢者に啓蒙して、嚥下障害の予防体操教室を保険外事業として行うことはできるかもしれません。また、嚥下障害用のとろみ食などの販売を手掛け、保険外収益を伸ばします。

 

他にも耳鼻科領域では、歌声外来はいかがでしょうか。声帯萎縮などの治療を行うだけでなく、「歌声道場」などと銘打って発声訓練を行い、肺活量や腹筋などを鍛え、豊かな声量を取り戻してもらうのです。カラオケやのど自慢大会などの共催で盛り上げることも可能かもしれません。

 

 

鼻涙管閉塞症に対する涙嚢鼻腔吻合術も需要拡大のポテンシャルがあります。現状では病状認識も治療意欲も決して高くないものの、高齢者になるほど罹患率が高いはずで、人生100年時代においては啓蒙活動次第で需要拡大が望めます。

 

日本経済の長期凋落傾向は根が深く、歯止めをかけることは難しいと思われます。そうであれば、普通に、平均的に運営していてはジリ貧が免れないということです。アイデアを出して、新しい領域に踏み込んでいく勇気と覚悟のある人に未来は切り拓かれます。

 

 

老木 浩之

医療法人hi-mex 理事長

 

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本連載は、老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)から一部を抜粋し、再構成したものです。

開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと

開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと

老木 浩之

日本医療企画

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