米ドル高・円安…「一時的な調整」と「終了」の見分け方【国際金融アナリストが解説】

5/24~5/30の「FX投資戦略ポイント」

米ドル高・円安…「一時的な調整」と「終了」の見分け方【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

米ドル/円は、足元これまでの米ドル高・円安相場が一服し、先週には一時127円割れまで米ドル安・円高が進みました。足元の動きは一時的な調整に過ぎないのか、それとも「怒涛の米ドル高・円安相場」は終了して揺り戻しが起きるのか……マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が考察します。

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    FFレート引き上げ見通し…「2.5%」を上回るか

    米2年債利回りは、この間2.5%を大きく上回るまで上昇しました。これは、5月FOMCで政策金利であるFFレートの誘導目標の上限が1%まで引き上げられた段階に過ぎないものの、既にそれがこの先2.5%まで引き上げられることを早々に織り込んだといった意味になるでしょう(図表5参照)。

     

    (出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)
    [図表5]FFレートの推移(2010年~) (出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

     

    図表6は、米2年債利回りとFFレートのスプレッド(差)の推移です。前回の米利上げ局面は、2015年12月~2018年12月まで続きましたが、その間米2年債利回りは常にFFレートを上回っていたことがわかるでしょう。

     

    (出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)
    [図表6]米2年債利回りとFFレートのスプレッド(2014年~) (出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

     

    以上から、今回の場合もFFレートが2.5%以上に引き上げられるといった見通しが続くなかでは、米2年債利回りが2.5%を大きく下回る可能性は基本的に低いでしょう。

     

    そのように米金利低下が限られるなら、それに連れた米ドルの下落も限られ、飽くまでこの間の急過ぎた米ドル上昇の調整の範囲内、たとえばせいぜい125円程度までにとどまるといった見通しが基本ではないでしょうか。

     

    ただし、もしも米利上げ見通しが、FFレートが2.5%以上に引き上げられないといった具合に下方修正される場合は、米2年債利回りも2.5%を割り込み金利低下リスクが拡大する可能性が出てくるでしょう。その場合は、米ドルも125円を割り込み、既に米ドル高・円安は131円台で終わっていたといった可能性も出てきかねないでしょう。

     

    気になるのは、これまで見てきたように、米金利急騰が一服、米金利が先週にかけて低下気味で推移するなかで、米国株の急落が再燃したということ。インフレ対策の米金利の急ピッチの上昇を警戒した株安ということではなく、米景気の先行き減速を懸念した米金利=米国株下落といった反応に変わり始めた可能性もありそうです。

     

    その上で、為替相場への影響を考える上では、これまで見てきたように米利上げ見通しが鍵になるのではないでしょうか。

     

    飽くまでも2.5%以上のFFレート引き上げ見通しに変わりなければ、米ドルも急過ぎた上昇の調整で125円程度までの下落にとどまりそうですが、FFレート引き上げが2.5%未満にとどまるといった見通しに下方修正されるようなら、米ドル高は既に終わり、米ドル安リスクが拡大する可能性に対する注意が必要になるかもしれないでしょう。

     

     

    吉田恒

    マネックス証券

    チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

     

    ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

     

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