(※写真はイメージです/PIXTA)

事業承継の一つの方法として「従業員承継」があります。社内の役員や従業員に会社を引き継ぐもので、親族承継とともに、よく実施される手法です。従業員承継にはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

社内承継でも時間をかけて教育を

社内承継では、職場で一定の経験を積み、経営に近い役割を任されてきた従業員が選ばれることが多いとされています。他の従業員との信頼関係や取引先との人脈は構築されているので異論が起きにくく、会社の一体感を事業承継後も維持しやすいと言えます。人選を間違えなければ、内外の協力を取り付けやすいでしょう。

 

ただし、先述したように経営者と従業員では会社経営に対する覚悟や責任感が大きく異なると言われます。実務に精通した役員や従業員のなかから後継者を選んだものの、トップになる資質やリーダー的性格に欠けていたという事例は少なくありません。選定後にミスマッチが発覚すると人間関係の悪化を招き、離職につながる恐れもあります。

 

まずは当事者と対話を重ね相手の想いや考えを聞くことが肝心で、親族内承継と同じく時間をかけて後継者として教育することです。「中小企業白書」(2020年)によると、社内役員・従業員から昇格した社長は、事業承継前5年程度は先代経営者とともに経営に携わる、自社事業の技術・ノウハウについて学ぶ、取引先・金融機関との関係を引き継ぐなどの取り組みを行っていることがわかっています。

 

承継後の5年間は新たな販路の開拓、経営補佐人材の育成などに意識的に取り組んでいて、しっかりとした教育を経て事業を引き継ぐことで、就任後からチャレンジングに事業運営に携わることができるようです。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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