「Uターン人材は優秀な人が多い」と評価
■地方企業にとってUターン人材は喉から手が出るほど欲しい
若い世代のUターン志向が高まっている一方で、地方の中小企業でもUターン人材を採用したいというモチベーションは高くなっています。この傾向は全国的なもののようです。
リクルート社による「UIターン人材活躍のセオリー~都市型人材を地方の起爆剤に~」という2016年のレポートを見ると、それが分かります。
まず地方の中小企業では「2社に1社は欲しい人材を集められていない」という現実があります。東京一極集中が進む一方で、地方の中小企業は苦労して人材を採用しても「中途採用の3割が3年以内に離職」してしまいます。つまり、地方企業は人材不足のマーケットから、限られた少数の原石を探し出すのに必死なのです。
私自身の経験から言っても、Uターン人材を面接・採用したことのある経営者はみんな「Uターン人材は優秀な人が多い。Uターンの応募は歓迎だ」と口を揃えて言います。
Uターン人材というのは、都会で活躍できる人たちがたまたま何らかの事情ができて地元に帰って来るわけなので、本来なら地元では手に入らなかったはずの人材です。それが幸運にも地元に来てくれるというなら、喉から手が出ます。
「このチャンスを逃したくない」「是が非でもうちの戦力になってほしい」と争奪戦になるのは必至で、新しくポストをつくってでも迎え入れたいという流れになるのです。実際に面接でUターン人材と会うと、身を乗り出して「うちに来い」「いつから来られるか?」と口説き始める経営者が少なくありません。
Uターン人材が実際に転職先でどんな活躍や貢献をしているかを見ても、「業績を高めた」が6割、「高い査定を受けている」「勤め先の期待に応えている」「周囲から一目置かれている」が4割と、いずれも地元人材より1割ほど高い値です。
また、新しいことに積極的に挑む傾向や、地元への愛があり地元の良さを知っている点も、企業から高く評価されています。
チャレンジ精神や地元の魅力・資源の発掘は、小さくまとまりがちな地方企業にとって、事業の縮小を回避し今後も生き残っていくうえで不可欠な要素です。それをUターン人材がもたらしてくれることに大いに期待しているのです。
■Uターン人材を起爆剤に新展開を図る地方の経営者たち
地方では創業者である親から会社を継いだ二代目・三代目が多く活躍しています。
私は今の会社を起業する当初から稲盛和夫さんの経営塾で学んでいたのですが、新潟に在籍した約200名の経営者のうち30代で創業者というのはほとんどいませんでした。ほかの年代を見ても、家業を継いだ二代目・三代目ばかりでした。東京では若くしてベンチャーを起業している人がたくさんいますが、地方は違うのです。
創業してまだ若い企業と老舗企業とでは事業フェーズが違います。若い企業はスタートアップでどんどん成長し経営を軌道に乗せなくてはなりませんが、老舗の場合は成熟期に入っているので、いかに寿命を延ばすかが課題になってきます。