(※写真はイメージです/PIXTA)

早期の決着が見込まれていたはずのロシアのウクライナ侵攻ですが、いまだ戦火がやむ気配はありません。複数回にわたって行われた停戦協議は暗礁に乗り上げ、ウクライナ避難民は500万人を優に超えていると言われています。では、そもそもプーチン大統領の大義はどこにあるのでしょうか? また、現状以上の被害を食い止めるために我々が優先するべきこととは? ウクライナ人国際政治学者が、ロシアの歴史と照らし合わせて解説します。

KGBでは「目的のために手段は選ばない」

KGBにとっては殺人は「最初の手段」

テロリストの思想構造と同様に、「正義」のもと侵攻を進めるプーチン大統領。ふりかざした凶器が「正義」である場合、「悪」よりも罪悪感を抱きにくいのかもしれません。しかし、彼がこれほどまでに非情になりきれるのは、KGB(ソ連邦閣僚会議付属国家保安委員会)、いわゆるソ連の秘密警察出身であることが大きいと言えます。

 

KGBの使命は「ソ連を世界的な大国にする」ことです。そのためには、決して手段を選びません。一般の常識では、人命を奪うことは「最後の手段」ですがKGBでは「最初の手段」です。まず、人命を殺めるところから作戦がスタートするのです。

大統領当選のために実行された非人道的作戦

プーチン大統領は、エリツィン前大統領の継承者として2000年5月7日に大統領就任しました。しかし、この就任を実現するために、多くの火薬がつぎ込まれています。

 

当時、人気が下降していたエリツィン前大統領の後継として登場したプーチン大統領は、当選を危ぶまれました。そこで、当時停戦中だった「チェチェン戦争」を、自身の支持率を高めるために利用しようと考えたのです。

 

チェチェン共和国は1991年にロシアからの独立を宣言したことから、独立反対のロシアに侵攻され内戦が始まりました。1997年1月~1999年8月は停戦していたのですが、くすぶっていた火種に再び薪はくべられ、「第二次チェチェン戦争」へと発展します。

「第二次チェチェン戦争」勃発

1999年9月、ロシア各地の4箇所で、民間人の住宅マンションで爆破が起こりました。約300人にも及ぶ、民間人の犠牲者が出ました。プーチン大統領の息がかかったメディアは「チェチェン人のテロリストによる攻撃」と大々的に報道しました。

 

民意を「野蛮なチェチェン人を許してはならない」という方向へ誘導することに成功すると、チェチェンへの空爆を開始し「第二次チェチェン戦争」を開戦しました。本戦争で勝利をおさめたプーチン大統領は国民の支持を獲得し、無事に大統領就任を果たしたのです。

 

マンション爆破はプーチン大統領の指示のもと、FSBロシア情報機関が実行したものです。自作自演でした。

 

この一件から、やんごとなき目的のためには、自国民の命を奪うことに抵抗がないことが分かります。自国民、他国民にかかわらず、目的のために命をうばうことを当然の犠牲と捉えています。彼にとって「人は、道具にすぎない」ので、いくら消費してもかまわないのです。すなわち、彼に道徳心を期待することは意味のないことです。

 

KGB出身の側近たちも同じ考えをもっており、国の指導層の大多数はこの考えで動いているため、クーデターの可能性は極めて低いといえます。

 

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