KGBでは「目的のために手段は選ばない」
KGBにとっては殺人は「最初の手段」
テロリストの思想構造と同様に、「正義」のもと侵攻を進めるプーチン大統領。ふりかざした凶器が「正義」である場合、「悪」よりも罪悪感を抱きにくいのかもしれません。しかし、彼がこれほどまでに非情になりきれるのは、KGB(ソ連邦閣僚会議付属国家保安委員会)、いわゆるソ連の秘密警察出身であることが大きいと言えます。
KGBの使命は「ソ連を世界的な大国にする」ことです。そのためには、決して手段を選びません。一般の常識では、人命を奪うことは「最後の手段」ですがKGBでは「最初の手段」です。まず、人命を殺めるところから作戦がスタートするのです。
大統領当選のために実行された非人道的作戦
プーチン大統領は、エリツィン前大統領の継承者として2000年5月7日に大統領就任しました。しかし、この就任を実現するために、多くの火薬がつぎ込まれています。
当時、人気が下降していたエリツィン前大統領の後継として登場したプーチン大統領は、当選を危ぶまれました。そこで、当時停戦中だった「チェチェン戦争」を、自身の支持率を高めるために利用しようと考えたのです。
チェチェン共和国は1991年にロシアからの独立を宣言したことから、独立反対のロシアに侵攻され内戦が始まりました。1997年1月~1999年8月は停戦していたのですが、くすぶっていた火種に再び薪はくべられ、「第二次チェチェン戦争」へと発展します。
「第二次チェチェン戦争」勃発
1999年9月、ロシア各地の4箇所で、民間人の住宅マンションで爆破が起こりました。約300人にも及ぶ、民間人の犠牲者が出ました。プーチン大統領の息がかかったメディアは「チェチェン人のテロリストによる攻撃」と大々的に報道しました。
民意を「野蛮なチェチェン人を許してはならない」という方向へ誘導することに成功すると、チェチェンへの空爆を開始し「第二次チェチェン戦争」を開戦しました。本戦争で勝利をおさめたプーチン大統領は国民の支持を獲得し、無事に大統領就任を果たしたのです。
マンション爆破はプーチン大統領の指示のもと、FSBロシア情報機関が実行したものです。自作自演でした。
この一件から、やんごとなき目的のためには、自国民の命を奪うことに抵抗がないことが分かります。自国民、他国民にかかわらず、目的のために命をうばうことを当然の犠牲と捉えています。彼にとって「人は、道具にすぎない」ので、いくら消費してもかまわないのです。すなわち、彼に道徳心を期待することは意味のないことです。
KGB出身の側近たちも同じ考えをもっており、国の指導層の大多数はこの考えで動いているため、クーデターの可能性は極めて低いといえます。