1-3月期決算は事前予想を上回る
<2桁の伸びを記録>
■5月6日現在でS&P500種指数採用企業の87%の434社が22年1-3月期の決算を発表しました。1株当たり利益の前年比伸び率は+10.4%と4月1日時点予想である同+6.4%を上回り、2桁の伸びとなりました(リフィニティブ集計)。
■セクター別に見ると、時価総額ウエイトで5%を占めるエネルギーが前年比+267.9%と大幅な伸びとなり全体の伸び率をけん引しました。伸び率が高いセクターは、素材が同+45.6%、資本財・サービスが同+40.0%などです。情報技術は同+13.4%、ヘルスケアは同+18.0%などでした。一方、一般消費財・サービスは同▲29.1%、金融は同▲17.1%、コミュニケーション・サービスは同▲3.8%の減益となりました。
■企業数でみた決算結果の事前予想に対する振れを見ると前期から変化が見られました。昨年10-12月期決算での業績上振れ比率はS&P500種指数採用企業全体の76%と22年1-3月期の79%とほとんど同じですが、最も上振れたセクターは情報技術で91%でした。情報技術の今回の上振れは85%です。また、生活必需品の上振れは69%から88%に上昇しました。
■22年1-3月期は、ロシアのウクライナ侵攻に対する西側諸国の経済制裁によって、資源価格や穀物価格が急騰するなど、インフレが加速し、米国は利上げに踏み切りました。また、ウィズコロナが浸透し小売りが堅調に推移するなど、米国企業を取り巻く環境が大きく変化する分岐点となりました。こうした経済・金融環境の変化がセクター間やセクター内での業績に影響を与えました。
極端な上振れは収束
<平均3%弱の上振れに収れんか>
■米国企業の業績は、20年1-3月期に新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、大きく悪化し、15.5%の下振れとなりました。その後は、大幅な金融緩和と大型の財政発動を背景に業績は改善し、21年4-6月期には29.2%の上振れを記録しました。12年1-3月期から19年10-12月期の上振れは平均2.6%であり、コロナ後の上振れは極めて稀なものだったと考えられます。
■米国景気は大幅に改善し、消費も雇用も堅調となる中、物価とコストの上昇をどのように吸収していくかが企業にとって重要な課題となっています。金融政策が正常化する過程で、企業業績の上振れは平均値に収れんしていくと考えられます。
外部環境の変化への対応力が業績のカギを握る
■リフィニティブによれば、22年の増益率は前年比+8.8%、23年は同+10.0%と予想されています。米国企業を取り巻く環境は、サプライチェーンの混乱に伴う供給制約が解消されていない上に、対ロシア経済制裁に伴う資源価格の上昇、労働力不足による賃上げ圧力と、それを背景としたインフレ高止まり懸念など不透明な要因が山積しています。
■S&P500種指数とその1株当たり利益の推移をみると、S&P500種指数は概ね利益の成長に沿って上昇しています。08年以降は、低インフレ・低金利環境の下で十分な流動性と堅調な業績が米国株式市場を支えてきました。今後は、原材料価格や消費者物価の上昇・高止まり、政策金利の上昇など企業にとっては新しい環境下での事業展開となります。特に金融政策の変化は数年後に景気後退や成長率の低下へとつながる可能性もあるため、企業業績の先行きは慎重にみる必要があります。外部環境の変化に如何に対応するかが、今後の業績のカギを握ると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国1-3月期決算は事前予想を上回る…今後の展開は?【専門家が解説】』を参照)。
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