日本のライブ・エンタメ事業はコロナ禍で大打撃を受け、市場規模は一時8割以上落ち込みました(ぴあ総合研究所より)。こうした状況に国ではさまざまな支援策を講じており、経済産業省の「J-LOD(ジェイ・ロッド)補助金」はそのひとつです。本補助金はどのような目的で創設され、また、日本のライブ・エンタメ業界にどのような効果をもたらしているのか……今回、補助金を担保につなぎ融資を提供するTranzax株式会社の代表取締役社長、大塚博之氏が、J-LOD補助金を担当する経済産業省コンテンツ産業課の高木美香課長、羽鳥博之係長に話を伺います。

業者だけではなく「演者」にもJ-LODが浸透

大塚 事業者のみなさんからの反応はどうですか。

 

高木 J-LODlive1がスタートする前は、「とにかくなんとかならないか」という陳情の嵐でした。緊急事態宣言においても形式上は公演の自粛要請ですが、国から言われると従わざるを得ないということでした。私たちとしても、元々ある補助金をうまく使いながら、なるべく業界に寄り添って、業界の皆さんのお役に立ちたいということで努力してきました。

 

一方で、補助金ですのでその交付にはさまざまな手続きが欠かせません。ところが、この業界では意外に契約書や見積書などの証憑(しょうひょう)類が整っていないことが分かってきて、申請手続きに関するマニュアルを用意したり、業界団体に補助金事務局のサポートセンターを立ち上げてもらったり、さまざまな課題の改善に一緒に取り組んできました。

 

いまでは業界のほとんどの事業者が利用されているといっていいと思います。また、テレビに出演した有名アーティストがJ-LOD補助金について発言していたり、出演者の方たちが受け取る支払い明細に「J-LOD分」という記載がされていたり、といった話も聞きました。

 

大塚 なかには想定していなかったような事業者からの問い合わせなどもありましたでしょうか。

 

高木 動物だけが出るイベントや、スポーツ関係のイベントの問い合わせがありましたが、J-LOD補助金は人間が出演するイベントのみが対象で、スポーツ関係についてはスポーツ庁のほうで支援策を設けており、残念ながらお断りせざるをえませんでした。

新たな補助金J-LOD3の申請募集がスタート

大塚 さらに今回、令和3年度補正予算によるJ-LOD(3)が成立し、2022年3月から申請受付が始まっています。簡単に内容をご紹介いただけますでしょうか。

 

高木 令和3年度補正予算で成立したJ-LOD(3)では「ビジネスモデル革新枠」と「収益基盤強化枠」という2つの枠があり、「収益基盤強化枠」(以下、J-LOD(3)-2)についてはさらに従来と同じように開催支援とキャンセル支援があります。このJ-LOD(3)-2は第1回登録申請が2022年2月からスタートしており、今後9月16日まで5回に分けて募集が行われます。

 

大塚 これまでのJ-LODlive1、J-LODlive2とはどのような違いがあるのでしょうか。

 

羽鳥 開催支援については、J-LODlive1,2では、中止になったイベントの再開が対象であり、中止したイベント数が申請数の上限でしたが、新規の中止案件が減少していることから、J-LOD(3)-2については、2020年2月から2021年1月までに中止した件数を上限としています。

 

経済産業省 商務情報政策局コンテンツ産業課係長 羽鳥 博之氏
経済産業省 コンテンツ産業課係長 羽鳥 博之氏

 

また、この期間に中止公演がない主催者(法人に限る)も対象に加え、「一律5件」の申請を認めることになっています。コロナ禍で、公演の企画自体を休止していたケースもあるだろうというのがその理由です。

 

キャンセル支援については、フェスなど大型イベントでは2,500万円の上限ではどうしても不足するので、1件あたりの補助の上限を5,000万円に拡大しています(ただし2,500万円を超える分は補助率2分の1)。

 

そのほか、J-LOD(3)ではこれまでの課題を踏まえてシステムを合理化し、申請書類の自動生成や捺印の不要化を実現しました。せっかく要件を満たしていても、申請段階で時間がかかるのでは本末転倒です。かねてより「なるべく手続きを簡素化したい」という思いがあり、必要な情報を入力したら書類が自動で出力されるようになっています。

 

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