日本のライブ・エンタメ事業はコロナ禍で大打撃を受け、市場規模は一時8割以上落ち込みました(ぴあ総合研究所より)。こうした状況に国ではさまざまな支援策を講じており、経済産業省の「J-LOD(ジェイ・ロッド)補助金」はそのひとつです。本補助金はどのような目的で創設され、また、日本のライブ・エンタメ業界にどのような効果をもたらしているのか……今回、補助金を担保につなぎ融資を提供するTranzax株式会社の代表取締役社長、大塚博之氏が、J-LOD補助金を担当する経済産業省コンテンツ産業課の高木美香課長、羽鳥博之係長に話を伺います。

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緊急事態宣言の前から…実質的には「中止状態」

大塚 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や経済に甚大な影響をおよぼしました。ライブ・エンタメ業界では年間6,000億円以上の市場規模が1,000億円程度にまで落ち込んだと聞きます。コンテンツ産業課にもさまざまな声が寄せられたのではないでしょうか。

 

Tranzax株式会社 代表取締役社長 大塚 博之氏
Tranzax株式会社 代表取締役社長 大塚 博之氏

 

高木 コロナの感染状況が深刻になり、はじめての緊急事態宣言がでたのは2020年4月7日でした。ただ、2月末に当時の安倍総理が全国規模のイベント開催について2週間の自粛を要請し、当日予定されていたPerfumeの東京ドーム公演が急遽、キャンセルになるという出来事がありました。

 

ライブ・エンタメ業界はもともと世論の動きに敏感なところがあり、その頃から実質的には自粛が始まっていたのです。そのため2020年度の市場規模は、前年のおよそ2ヵ月分しかありませんでした。

 

出所:https://corporate.pia.jp/news/detail_live_enta20210928.html
[図表1]ライブ・エンタテインメント市場規模:将来推計(ぴあ総合研究所) 出所:https://corporate.pia.jp/news/detail_live_enta20210928.html
※2022年3月までにイベント開催制限が完全撤廃されると推定

 

大塚 とはいえ、国としては素早く対策を打ち出されたように感じます。

 

高木 はい。最初の緊急事態宣言が出た直後の補正予算で、ライブ・エンタメ業界向けのJ-LODlive1補助金を計上し、2020年5月27日から申請受付を開始しました。

 

コンテンツ産業課は従来から日本のコンテンツ産業の振興をミッションとしており、国内市場のみでは限界がみられるなか、海外の需要を取り込むため、たとえば日本のアーティストが海外で公演するときの渡航費やプロモーション費用などを補助してきました。

 

コロナ禍においては、海外にもいけずプロモーションの機会が失われたため、国内でいったん中止したものを再開するケースなど幅広くライブ・エンタメ業界を支援するための補助金を用意しました。

 

大塚 当初はいったん中止したイベントを再開する際の開催費用の支援でしたが、その後、イベントを自粛した場合の会場費等のキャンセル費用等の支援も追加されました。

 

高木 業界関係者のみなさんと意見交換するなかで、準備していた公演が急遽中止になると、前払いした会場費や舞台製作費は返ってこない、いつ再開できるかもわからない、そうした損失が積み重なると身動きがとれないという話が多く聞かれました。

 

経済産業省 コンテンツ産業課長 高木 美香氏
経済産業省 コンテンツ産業課長 高木 美香氏

 

そこで、中止したことで返ってこない経費は全額補助するということでキャンセル支援のメニューを追加しました。

 

なお、開催支援、キャンセル支援とも公演単位での申請が可能で、非常に使いやすくなっています。1事業者で何十件、何百件と利用されるケースもあります。

 

大塚 予算の執行状況はどうでしょうか。

 

羽鳥 これまでのところ令和2年度第1次補正予算でJ-LODlive1(878億円)、令和2年度第3次補正予算でJ-LODlive2(1,343億円)を用意し、多くの事業者のみなさんに活用していただいています。

 

開催支援においては、中止した公演の件数を基準に1件あたり5,000万円(J-LODlive1)ないし3,000万円(J-LODlive2)を上限に、2分の1を補助しました。

 

キャンセル支援としては、J-LODlive1では緊急事態等地域(2021年1月から全国ツアーも)を対象に1件あたり上限2,500万円、補助率100%で実施しました。

 

J-LODlive2では入国制限の影響で海外からのアーティストの来日が難しくなり中止になった案件も追加しています。

 

[図表2]J-LODlive補助金の支援実績

 

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