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東京の不動産が世界から注目されている
■コロナ禍で海外の投資家から脚光を浴びる東京の不動産
2020年に入り全世界で爆発的に感染が広がった新型コロナウイルス。誰も予想だにしなかったこの事態は、不動産市場にも影響を及ぼしました。ホテルやオフィス市場を中心に先行き不安の声があがり、実際に東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率はコロナ禍を契機にじわじわと上昇を続けています。
では、東京で不動産に投資する魅力は失われてしまったのでしょうか。答えはNOです。むしろ現在、世界中の機関投資家が次々に東京の不動産を買い進めています。
世界大手の不動産サービス、ジョーンズラングラサール(JLL)はこのほど、2021年第一四半期における不動産投資額の世界の都市別ランキングを発表しました。
その結果、東京は79億ドルで2位にランクイン。2020年通年でツートップとなっていたパリとロンドンの2倍に迫る投資額となっています。確かにこのところ、海外ファンドによる大型投資の話題には事欠きません。
例えば、香港の大手投資ファンドは3年ほどかけて最大で8400億円を日本の不動産に投じる計画です。さらに、カナダの投資ファンドも、日本の不動産への投資枠を拡大し、今後数年で最大1兆円を投資すると報じられています。
加えて、海外の富裕層や機関投資家による都心部のマンションの購入意欲も旺盛です。JLLの調査によると、国内の賃貸集合住宅への投資額は2020年上半期でコロナ前の前年同期比で約3倍に膨れ上がり、その要因として海外投資家からの旺盛な投資活動が挙げられています。
■東京の不動産は世界的に安定かつ割安
これほどまでに東京の不動産に注目が集まる理由は主に2つあります。1つはほかの投資に比べて安定して収益を得られることです。
現在、経済対策で日米欧すべてにおいて、史上最大規模の財政出動が行われています。
各国の中央銀行は国債やETF、REITといったあらゆる金融商品を市場から買い上げ、お金をばらまいているのです。その結果、先進国の国債などのいわゆる安定資産を中心に、金融商品全般の利回りが低下しています。
どの金融商品に投資してもいわば「儲からない」なかで、世界の投資家が目を向けているのは、日本の不動産から得られる安定した収益です。日本は世界各国のなかで、比較的政治的なリスクが低く、今後も低金利が続く可能性が高いとみられています。これにより、利回りと借入金利の差、すなわちイールドギャップが大きく取れるので、投資価値が高いと見られているのです。
もう1つの理由として、東京の不動産は他国の主要都市と比べ、割安とされていることが挙げられます。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2015年を100とした2021年1~3月の住宅価格は、米国とドイツで147、カナダが146、英国が129など大きく上昇するなか、日本は111と上昇幅が比較的小さくなっています。
また、UBSが公表している2020年のグローバル不動産バブル指数でも、世界の大都市のなかで東京は10位であり、バブルのリスクがあるとされる指数1.5を下回る1.20と評価されています。
一方、中国や韓国ではマンションを中心に不動産の価格が高騰し社会問題にまで発展しています。海外投資家たちがいま最も注目しているエリアが日本、特に東京の不動産なのです。