裁判にて、不法行為を裏付けた「メッセージ」
これは、令和3年5月31日、東京地方裁判所において「被告が既婚者であるにもかかわらず、未婚者を装って原告と長期間にわたり性的関係を伴う交際を続けるなどし、原告の人格権を侵害したとして、不法行為に基づき570万円の損害賠償を求めたところ、106万円の支払いが認められた」というものです。
図らずも不貞行為に及んでしまった被害者には、救済の道が残されている、むしろ積極的に損害を主張できる立場にあることを指摘することができます。
さらに、判決文には、被告が送ったメッセージ「もちろん長時間一緒にいたいですが家に泊まり合うということはあまり好きではないんです。まず着替えたい。1人でひといきつく時間も必要。」が、被告が単身で起居していることを推察させるものであることから、
『本件アプリ(※)の性質及び被告が原告に送信したLINEのメッセージの文言という客観的事実のみによっても,被告は,原告に対し,自身が独身であって,原告とのみ性的関係を結んでいるかのように振る舞っていたものと認められる。』と述べられています。
※ 2人はマッチングアプリを介して知り合いました。
僕は未婚です、と積極的に述べていなくても、不法行為になると判断されていることも指摘できます。
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そこで本件では、「婚姻予約かどうか」が争点であった序盤から、中盤にかけて「既婚であることの秘匿」「これに基づく性交渉を長期的に維持することの当否」に争点の重点を移していくよう弁護をおこないました。
その結果、100万円の和解が実現しました。相手の弁護士は最後の最後まで不服の弁を述べていましたが……。
既婚であることを秘匿するだけでなく、騙してストーカー規制法違反を指摘してくるような卑劣な行為には、屈しなくてよいのだとわかる事例です。
齋藤 健博
銀座さいとう法律事務所 弁護士