早期退職制度を導入する際の注意点
企業が新たに早期退職制度を導入する際には、次の点に注意しましょう。
従業員に導入の意図が誤解されないよう十分説明する
従業員からみた場合、早期退職制度の導入がリストラ計画の1つだと捉えられてしまうことがあります。場合によっては、企業の業績が悪化しているのではないかとの懸念が広がってしまうケースもあるでしょう。
このような誤解が生じると、早期退職制度の対象者以外にも人材が流出してしまったり、従業員の士気が低下してしまったりするおそれがあります。
こうした事態を避けるため、制度を導入する際にはあらかじめ従業員に制度内容と制度導入の意図をよく説明することが重要です。
制度を十分作りこむ
早期退職制度を導入するには、就業規則に記載をしたり退職金規程を作成したりすることが必要です。
就業規則や退職金規程のひな型はインターネットを検索すれば簡単に見つかるかと思いますが、これをそのまま利用することはおすすめできません。特に、早期退職制度は企業によって制度導入の目的や目指す効果が異なる場合が多く、単に一般論を記したり他社のために作られたりしたひな形では不十分です。
また、男女雇用機会均等法など、遵守すべき法規も多いので、早期退職制度を導入する際には、弁護士などの専門家に相談のうえで慎重に制度設計を行い、自社に合った規程をつくり込むようにしましょう。
会社の承諾が必要なことを周知する
早期退職制度では、制度利用にあたって会社の承諾が必要となるように制度設計をすることが一般的です。
しかし、制度内容が周知されていなければ、申し出さえすれば必ず早期退職ができると誤解されてしまうかもしれません。その結果、申し出たにも関わらず、承認されなかった従業員は、退職を希望したという事実を抱えたままその会社に残ることになり、不安を抱えたまま仕事をしなければならなくなるかもしれません。
制度導入の際には、退職には会社の承諾が必要なことなど制度の内容を従業員へよく周知しましょう。
人材と一緒に情報が流出しないよう注意
早期退職制度を利用する従業員のなかには、同業他社や業種の近い他社へ転職する人もいるでしょう。この際に、人材と一緒に機密情報が流出してしまわないように注意が必要です。
具体的には、退職する従業員との間で秘密保持契約を締結することや、秘密保持に関する誓約書を提出させることなどが考えられます。
まとめ
早期退職制度は、会社の若返りを図ったり長期的にみた際の人件費を削減したりするために、検討したい制度の1つです。ただし、制度設計や運用方法を誤ると、退職して欲しくない人材の流出や情報の流出などにつながってしまう懸念があります。
早期退職制度の導入を検討する際には、弁護士に相談のうえ制度や運用方法をしっかりとつくり込むことをおすすめします。
西尾 公伸
Authense法律事務所弁護士