
環境に配慮した経済活動であるかどうかの認定基準としてEUが定める「EUタクソノミー」が注目されています。6つの基準がある「EUタクソノミー規則」の要求度はいずれも高く、世界的な活況を見せるM&Aの動向にどのような影響が及ぶのか、気になるところです。最新状況を見ていきます。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。
あなたにオススメのセミナー
【関連記事】米州のM&Aの最新事情…デジタル成熟化・技術高度化が進展
議論の中で登場した「持続可能な投資」というテーマ
欧州のM&A活動は、14年ぶりの高水準となり、前年同期比で力強い伸びを示し、ほぼすべての地域で前年同期比2桁の伸び、エリアによっては3桁の伸びを記録しています。
このM&Aが好調の裏には持続可能な投資、すなわち「グリーン」投資へのニーズの高まりがあります。実際、2021年には、EUに登録されたファンドの運用資産のほぼ40%がサステナブルとして販売されており、組織の環境・社会・ガバナンス(ESG)クレデンシャルを強化するために行われたM&Aの具体例も数多く存在します。
環境・社会・ガバナンス(ESG)を巡る議論の中で、「持続可能な投資とは何か」「何をもって持続可能な投資とするか」という分類が大きなテーマとなっています。
欧州の規則当局は、多くのESG関連事項の先駆者であり、世界の政策立案者がしばしば指針とする規則や原則の策定に尽力してきました。次の重要なステップとしては、EUの持続可能な活動に関する「EUタクソノミー規則」の基準策定です。この基準は、どのような活動が環境に優しいかを明確にすることで、投資家が投資対象に対してより確信を持って、持続可能なプロジェクトに投資できるようにすることを目的としています。
「EUタクソノミー規則」は、6つの環境目標を掲げています。最初の2つ、すなわち「気候変動の緩和と適応」に関しては、市場参加者は2022年1月に自分たちの活動がどれほどタクソノミーと合致しているかを、最初に開示することが求められています。残りの4つの目的に関する開示は、2023年1月に要求される予定です。
企業と投資家にとっての「プラス要素」も
この規則は厳しいものですが、企業はEUタクソノミーの利点にも注意する必要があります。規則を明確にすることで、すべての関係者が目の前の企画について自信を持ち、グリーンウォッシュのリスクを軽減することができるはずです。このような環境基準を満たすことは、従業員だけでなく、消費者にとってもますます重要となってきています。
IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによると、環境問題の深刻化に直面しながらも、ユーロ圏のGDP成長率は2021年に5%、2022年に4.3%と順調に推移し、イギリスも今年・来年と、それぞれ6.8%と5%の成長が見込まれています。欧州新興国も2021年に6%、2022年に3.6%の成長が見込まれています。
このような明るい予測は、株式市場の評価を高め、M&Aにおける資産の適正価格を支え、売り手と買い手の取引に自信を与えています。
このような環境では、ESGに強い企業はますます魅力的な資産となり、ポートフォリオに加えることが歓迎されることでしょう。風評被害への懸念や、増え続ける証拠から、グリーン投資は少なくとも代替投資とそれ以上ではないにしても、同程度の利益を生むという主張が支持されています。
清水 洋一郎
Datasite 日本責任者
【勉強会/相談会情報】
※【少人数制勉強会】30代・40代から始める不動産を活用した資産形成勉強会
※ 【対話型セミナー/複数日】会社員必見!副収入を得るために何をすべきか?