(※写真はイメージです/PIXTA)

米国の利下げなどの影響で、市場が活性化し、世界の「M&A市場」は再び盛況となる兆しをみせています。国際市場の現状とともに、「M&A市場」の傾向と今後の展開についてみていきましょう。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

世界の「M&A市場」は再び盛況化の兆し

南北アメリカおよび欧州での利下げがそれぞれの地域の市場を活性化させていることから、M&Aが再び世界的に盛況化する兆しがあります。

 

中国の金融緩和に対する反応はまちまちですが、その一方で、日本は世界中の投資家を積極的に受け入れる態勢を整えています。DatasiteとMergermarketが発行する最新のDeal Driversレポートでは、ディールメーキングの復調を牽引している市場と、最も活発なセクターについて分析しています。

好調な国際市場…「M&A」活発化の条件が整っている

米国では、インフレ圧力が沈静化した経済の再活性化を狙い、米連邦準備制度理事会(FRB)が50ベーシスポイントの利下げを実施して金融緩和を示唆したことから、ディールメーキングに楽観的な見方が戻ってきました。

 

ディールメーカーにとって、これらの動向は、資金調達のための諸条件がより予測しやすくなることを意味します。評価額が安定し、資金を調達しやすくなるため、M&A活動に有利な条件が整うことになります。

 

中南米では、ブラジルが利上げでインフレに対処しており、電気自動車や風力タービンなどのクリーンエネルギー技術に不可欠な希土類元素(REE)の主要供給国としての地位を確立しつつあります。

 

メキシコは株式市場と消費者支出を活性化するため、利下げを実施しました。地域についていえば、ブラジルとメキシコが中南米地域のM&A活動の大部分を占めており、エネルギーとテクノロジーがその主な原動力となっています。

 

通信・メディア・テクノロジー(TMT)セクターは他のどの産業よりも好調だっただけでなく、第3四半期の取引量についても大幅な増加を記録し、他の業界の取引量が軟調化するなかで、例外的な堅調ぶりを見せました。

 

同セクターの第3四半期の合計は、843件(前年同期比10.6%増)でした。工業および化学セクターは、中堅市場の活性化に支えられ、取引額が増加しました。

 

注目されたディールには、マースによるケラノバの360億ドルの買収、ベライゾンによるフロンティア・コミュニケーションズの200億ドルの買収案、Tモバイルによるメトロネットの98億ドルの買収などがあり、テクノロジー、インフラ、消費財に対する投資家の強い関心を浮き彫りにしました。

欧州経済は依然鈍調も、M&A市場は楽観的

エネルギーコストの高騰とウクライナ戦争の影響で、欧州の経済回復は依然として鈍調です。

 

欧州中央銀行は経済成長を刺激する目的で最近利下げを実施しましたが、2024年のGDP予測は0.8%と控えめな数字になっています。一方、中東とアフリカでは、地政学的緊張、石油生産量削減、インフラのニーズの影響を受けて、成長が不安定になっています。

 

EMEAの2024年第3四半期のM&A活動は比較的低調で、ディール件数は3,658件(前年同期比5.2%減)となったものの、総額は2.5%ほどわずかに増加して1,908億ユーロとなりました。

 

TMTセクターでの高額取引がM&A活動を牽引し、英国・アイルランドとDACH地域(ドイツ、オーストリア、スイス)ではTMTと工業および化学(I&C)のセクターで力強い勢いが見られました。TMTセクターは、取引件数が前年同期比で6.5%減少したにもかかわらず、取引額は389億ユーロとなり、ランキングトップに立ちました。

 

消費者セクターでは、特に裁量的支出が増加している英国とドイツで有望な回復の兆しを見せています。消費者信頼感と支出の増加は、消費者セクターにおけるM&Aの大きな可能性を示唆しています。

 

今年はこれまでのところ買い手の支出額が増加していて、平均取引額が増加傾向にあるため、全般的に楽観的な見方ができます。年初来のM&A取引の平均額は5,370万ユーロで、2023年の同時期と比べて27%の顕著な増加が見られています。

アジア太平洋地域は、引き続き魅力的な市場環境

アジア太平洋地域のM&A活動は第3四半期に回復し、取引額は2年ぶりの高水準となる2,900億ドルに達しました。平均を上回るGDP成長率、堅調な消費者需要、急速なデジタル変革などの要因により、アジア太平洋地域は引き続きディールメーカーにとって魅力的な地域といえるでしょう。

 

利下げや市場流動性増強策を含む中国の最近の景気刺激策は、成長鈍化とデフレへの対応が目的ですが、特に米国と欧州への輸出の減少により外需が弱まるなか、不確実性が依然として残っています。

 

一方、日本は17年ぶりに政策金利を引き上げ、金融正常化の兆しを見せています。中国の経済難により外国投資家の関心先が移り変わるなか、日本のM&A活動は急増しており、中国を追い抜く可能性があります。

 

東南アジアでは、特にTMTおよび消費者セクターにおいてデジタル変革が加速しており、クラウドコンピューティングと電子商取引をサポートするデジタルインフラへの投資が必要となっています。消費者市場は2030年までに4兆ドルに達する見込みであり、M&Aの可能性にさらに注目が集まっています。

 

インドは、「デジタル・インディア」構想と急成長する経済に牽引され、TMTと消費者セクターを中心に重要なM&A先として外国投資家が引き続き注目しています。

 

 

清水 洋一郎

Datasite 日本責任者

 

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