(※写真はイメージです/PIXTA)

「いずれ後継者に会社を譲り、悠々自適のシニアライフを送りたい」そう考えている中小企業経営者も、具体的な計画を立てているケースは多くありません。しかし、実際の事業承継は、後継者に「経営権」「自社株式」の2つを渡す必要があり、それぞれをどのタイミングで譲るのか等、周到に考えるべきことが複数あります。年齢を重ねてから焦ることがないよう、早めに計画し実行に移すことが大切なのです。

多くは「60代後半~80歳」での事業承継が希望だが…

社長もまだ若く、気力・体力が充実しているときは、事業承継計画を作ることより、会社の事業拡大や新規事業の検討などの経営計画の作成を優先することと思います。社長それぞれに、さまざまな考え方がある思いますが、実際のところ、社長が事業承継を具体的に考え始めるのは、だいたい60歳半ばを過ぎからだと筆者は考えています。

 

2020年にアクサ生命が全国の中小企業経営者を対象に行ったアンケートをまとめた「社長さん白書2020」によると、事業承継の時期を決めていると答えた社長の割合は42.3%でした。時期を決めている社長に対して、その時期はいつかという質問には、70歳~79歳という回答の割合が一番高く39.8%、次いで65歳~69歳の割合が27.5%でした。このアンケート結果から、65歳~79歳までの間に承継したいと考えている社長の割合が7割近いことからも、上記の筆者の推測は違っていないのではと思っています。また驚くことに、生涯現役と回答した社長は6.7%もいたようです。

 

アクサ生命のアンケートの回答からは、事業承継について、後継者を社長として経営権を承継することを想定しているのか、それとも、経営権に加え社長の株式を後継者に承継する、両方の承継を考えているのか、そこまでは読み取れません。しかしながら、明確なのは、多くの社長が事業承継の時期を「60歳代後半から、80歳になるまでの間」と考えているという点です。

「75歳までに事業承継完了」の計画書を作成しては?

厚生労働省の簡易生命表(令和2年)によると、75歳男性の平均余命は12.63歳、女性は16.25歳です。WHOの提唱する健康寿命(2019年)は、男性72.68歳、女性75.38歳です。

 

健康状況は人によりさまざまですが、上記の数字より、中小企業の社長は「75歳までには後継者に事業を承継する」といった、ひとつの目安を作ってみるのもいいのではないでしょうか。

 

75歳までに事業承継を完了できれば、男性ならその後十数年の時間を会社以外の時間に充て、充実したシニアライフプランを過ごすことができます。また、これまでの事業と違う領域で社会貢献を目指すのもよいのではないでしょうか。

 

自社株式の承継計画で、相続時に自社株式を後継者に承継すると決めた社長には、自社株式の承継手段として信託を活用するといいかもしれません。

 

後継者を受託者、社長を受益者とする信託では、後継者が株主総会に議決権行使していくことになります。社長は受益者として後継者が務める受託者を監督しながら、会社に関する決定事項を後継者に任せることができます。そして社長の相続の際には、後継者を信託財産の帰属権利者としておけば、社長の相続時に後継者に自社株式を速やかに渡すことができます。この信託の利用で、自社株式については遺言を作成したことと同様の効果を得ることができます。

 

株式の渡し方の1つの方法としての信託の利用については、また別の稿で詳述したいと思います。
 

 

 

石脇 俊司
一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
株式会社継志舎 代表取締役

 

 

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