同居する要介護者との世帯分離で、介護費用が安くなる
【対象】 要支援・要介護認定を受けた人
【制度】 世帯分離
介護する人とされる人の世帯を分離すれば、世帯単位で受けられる負担軽減などの対象になりやすくなります。
◆世帯分離とは?
●世帯とは、住民基本台帳に関わる法律のうえで「居住と生計をともにする社会生活上の単位」とされているので、同一家屋に住んでいても、生計を別にしていれば別世帯と考えられる。
●世帯分離とは、住所の変更をせずに、いまの世帯を分離して複数の世帯にすること。介護保険制度では世帯単位の所得で費用が決まるサービスも多いので、要介護者の所得が少なく、介護者の所得が多い場合は「世帯分離」をしたほうが、有利になることが多い。
●ただし、住民票の記録は「住民の実態と合致している」ことが運用の基本方針なので、実態と合致しない場合は、受理してくれるかどうか市区町村によって判断が違う可能性がある。
◆要介護者の所得が多い場合は有利にならない
●要介護者(たとえば親)の所得が多い場合は、有利になることはない。年金以外の収入も多く、住民税課税対象者であったら「一般」と見なされるので、世帯分離しても、介護保険料の軽減もなく、高額介護サービス費や介護保険施設の居住費・食費軽減の対象者にもならない。むしろ世帯分離したことで、国民健康保険料や医療費などの負担が増える可能性(減る可能性もある)もある。
●親の介護費用がかさみ家族全体の生活が苦しくなるようなら、世帯分離について、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみる方法がある。
★同居による世帯と世帯分離
【要介護者】
要介護3 支給限度額270,480円、サービスを限度額まで利用の場合
①同一世帯での同居
住民票上の世帯
介護者(世帯主)課税対象者 + 要介護者
→ 27,048円 負担
②世帯分離での同居
住民票上の世帯:
介護者(世帯主)課税対象者
+
住民票上の世帯:
要介護者(世帯主)課税対象者(低所得の場合は非課税)→第2段階と想定
→ 15,000円 負担
高額介護サービス費(戻ってくるお金)=12,048円
★世帯分離で考えられる負担の増減
介護保険関係
①介護サービス利用料……〇
世帯の所得が減るので、利用者の負担が軽くなる可能性がある
②介護保険施設などの居住費・食費……〇
世帯の所得が減るので、利用者の負担が軽くなる可能性がある
③介護保険料……〇
世帯の所得が減るので、利用者の負担が軽くなる可能性がある
その他
④介護者の勤務先からの扶養手当……△
別世帯でも認めるかは介護者の勤務先の規定による
⑤介護者の健康保険料……△
別世帯でも扶養者と認めるかは介護者の勤務先の規定による
⑥国民健康保険料……○×
親の所得によって負担の増減の可能性がある
⑦医療費……○×
所得によって負担減もあるが、高額療養費制度の世帯合算などが適用されずに負担増になることもある
溝口 知実
特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー