日本の借金は過去最大の1220兆円に上りますが、日本は財政破綻しないといいます。自国通貨建てで国債を発行する限り、財政破綻はしない。さらに、日本銀行は「日銀特融」という制度で無担保・無制限の融資を行って預金者たちの預金を全額守ったりしています。元内閣官房参与の藤井聡氏が著書『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)で解説します。

なぜ政府は借金を返さなくても大丈夫なのか

■政府の借金は返さなくてもいい!?

 

――ちょっと待ってください。政府の借金はないことになって、ただ単に政府がおカネをつくり出して、そのおカネを使う!? それが本当なら、誰も苦労しませんよね。先生がおっしゃる理屈はよくわかりますけど、そんなうますぎる話、すぐには信じられません。

 

藤井 そうかもしれませんね。普通、人からおカネを借りたら返さなくちゃいけないし、利子も払わないといけないのに、政府の日銀からの借金だけは特別だなんて、にわかには信じられないかもしれない……。

 

では、別の角度から説明しましょう。さっきは、日銀は政府の子会社だから親会社の子会社に対する借金は、借金じゃないんですよ、という話でしたが、親会社と子会社の間であろうが、借金は借金じゃないか、と素朴に感じる方もおられるかもしれません。仮に日銀は政府とは別の組織だと考えたとしても、日銀による政府に対する貸し出しは、私たち一般の国民が銀行や消費者金融からおカネを借りる、いわゆる「借金」とは全然違うんですよ。

 

第一に、日銀は政府に対して「貸したカネを耳をそろえて返せ!」という圧力はかけません。日銀はいくらでもおカネをつくり出せる存在ですから、貸したカネを返してほしい、という動機がそもそもないのです。日銀以外の存在にとっては、おカネは大変に貴重な代物ですが、日銀にとっておカネは別に貴重でも何でもない。なんといっても、おカネは「日本銀行券」であって、日銀が自らいくらでもつくり出すことができるのですから。

 

もちろん、借金の返済期日が来れば、政府は借りたおカネを返さなければなりません。でも、そのおカネを、政府はまた日銀から借りることができるんです(一般にこれは「借り換え」といわれます)。つまり10万円を1年間借りていたとしても、1年後にまた10万円を同じ人から借りる、というのを延々と繰り返すことができるわけです。そうなれば実際、その借りたおカネを返す必要が延々となくなります。それと同じことが、政府は日銀に対してできるわけです。

 

第二に、普通、借金すると利子を払わないといけませんが、さきほども指摘したように、政府が日銀からおカネを借りた場合、利子を払う必要がありません。これが、法律で定められています。

 

だから、あっさりいうと、日銀から政府がおカネを借りた場合、政府はその利子を払わなくてもいいし、元本そのものも延々と返さなくてもいいのです。返さなくてもいいし利子もない借金なんて、もう借金じゃないですよね。はっきりいって、「もらった」のと全く同じ。

 

なぜ、そんなふうに「日銀から政府への貸し出し」は、私たちの借金と違ってものすごく優遇されているのかというと、それはひとえに日銀が政府の子会社だからです。したがって、日銀が政府の一部だと考えても、そう考えずに独立の存在だと考えても、結局は、日銀から政府が借りたおカネは、いわゆる普通の「借金」としては考えなくてもいい、ということになるんです。

 

――なるほど……要するにそれって、ものすごく仲の良い親子がいて、子どもが親からおカネを借りて、一応親は「貸した」とはいってるけど、利子も取らないし、返せともいわない、というのと同じような話なわけですね。

 

藤井 まさにおっしゃる通り。そういうふうに考えてもらって構いません。ちなみにここまでお話しした内容は、経済学の現代貨幣理論、通称MMT(Modern Monetary Theory)という理論が前提としている「事実」です。この「事実」は、MMTというのが少し知られるようになったので一般の人も知るところとなりましたが、その遥か以前から、おカネについてある程度知っている銀行員や税理士、財務官僚なら、「当たり前の常識」として知っている事実なんですよ。

 

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本連載は藤井聡氏の著書『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

藤井 聡 木村 博美

ポプラ新書

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