(写真はイメージです/PIXTA)

寄与分とは、被相続人の財産の増加や維持に寄与した人に認められる、本来の相続分に上乗せされた取り分です。寄与分は遺言書があっても主張することはできるのでしょうか? 相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説していきます。

遺言書で寄与分を定めることはできるのか?

遺言書で、寄与分を定めることはできません。寄与分の定め方として、遺言は指定されていないためです。

 

しかし、他の方法で実現することは可能です。

 

たとえば、遺言者である父は、長男が自分の療養看護につとめてくれたことに感謝しており、長男に寄与分を渡したいと考えているとします。そもそも遺言書で誰にいくらの財産を渡すのかは、遺言者の自由です。そのため、あえて「寄与分」との表現を持ち出さずとも、単に長男に多くの財産を割り当てる内容で遺言書を作成すれば良いのです。

 

これにより、長男の貢献に報いたいとの思いを実現することが可能になります。

 

また、長男への感謝の意を示すために、あえて「寄与分」ということばを使いたいと考えるのであれば、それは本文ではなく「付言事項」という形で記載しておくと良いでしょう。

 

付言とは、遺言書の中で、お手紙を書くようなイメージです。付言には法的な拘束力はありませんが、自由に記載することができます。

 

たとえば、次のような内容を記載をすることが考えられます。

 

「長男はこれまで私と同居し、多大な世話をかけてきました。そのため、長男に多くの財産を遺すことにより、感謝の意を示します。」

 

これにより、寄与分的な意味合いとして、長男に対し財産を多く遺すのだという「想い」を伝えることが可能です。

 

お世話になった人に報いたいなら遺言書を遺しておこう

寄与分を取得することは、決して容易ではありません。寄与分を手にするためには、次のようなハードルが存在するためです。

 

  • 自分から請求しなければいけない心理的ハードル
  • 他の相続人と寄与分の有無や金額の折り合いをつけるハードル
  • 裁判所に「特別の寄与」と認めてもらうハードル

 

これらを乗り越えて、はじめて寄与分を手にすることができるのです。場合によっては、他の相続人との今後の関係性を考慮して、寄与分を請求しないとの判断をする場合もあるでしょう。

 

そのため、お世話になった人にしっかりと財産を渡すためには、財産を遺す側が、生前に遺言書を作成しておく必要性が高いです。

 

◆まとめ

寄与分が認められるためのハードルは、決して低いものではありません。中でも療養看護などは認められるための判断基準も厳しいものです。

 

また、仮に認められたとしても、望んだほどの金額は認められない可能性もあり、悔しい思いをしてしまうこともあるでしょう。

 

寄与分の請求で困ったら、まずは弁護士へ相談してください。

 

 

Authense法律事務所

堅田 勇気

 

 

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