(写真はイメージです/PIXTA)

寄与分とは、被相続人の財産の増加や維持に寄与した人に認められる、本来の相続分に上乗せされた取り分です。寄与分は遺言書があっても主張することはできるのでしょうか? 相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説していきます。

遺言書と寄与分はどちらが優先されるのか?

遺言書と寄与分とでは、原則として遺言書が優先します。遺言書ですべての財産について相続させる人や遺贈を受ける人が決まっているのであれば、もはや寄与分を請求する余地はありません。

 

たとえば、長男が特別の寄与をしたにもかかわらず、遺言書で相続させるとされた財産が長男と二男とで同程度であったとします。このように遺言書ですべての財産について相続させる人が定められている場合、長男はそれ以上の額を寄与分として請求することはできないということです。

 

遺留分を請求できる場合はある

寄与分の請求が難しくても、遺留分の請求ができる場合はあります。

 

やや極端な例ではありますが、長男が特別の寄与をしたにもかかわらず、二男に全財産を相続させる内容の遺言書があったと仮定しましょう。この場合、遺言書で指定のない財産がない以上、長男は寄与分を請求することはできません。先ほど解説したとおり、遺言書は寄与分に優先するためです。

 

しかし、この場合、長男は二男に対して遺留分を請求することができます。遺留分とは、子や配偶者など一定の相続人の保証された、相続での最低限の取り分のことです。

 

なお、兄弟姉妹や甥姪には遺留分はありません。

 

遺留分を侵害した内容の遺言書も有効ではあるものの、遺留分を侵害された人は遺言などで多く財産をもらった人に対して、侵害された遺留分相当の金銭を支払うように請求することができます。

 

この請求を「遺留分侵害額請求」といいます。遺留分の割合は、全財産の2分の1(両親など第二順位の相続人の身が相続人となるケースのみは3分の1)です。

 

個々の相続人が請求できる遺留分は、この2分の1に、それぞれの相続人の法定相続分を乗じて算出します。

 

たとえば、法定相続人が長男と二男の2名だけである場合の遺留分は、それぞれ次のとおりです。

 

長男:2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1

二男:2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1

 

上の例では、長男は全財産の4分の1を遺留分として二男へ請求することが可能です。

 

ただし、遺留分の計算をする際には、寄与分を考慮することはできません。長男に特別の寄与が認められる場合であっても、遺留分は原則どおりの4分の1であり、特別の寄与があったからといって遺留分が増額されるわけではないのです。

 

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