イラストレーション=メイ ボランチ

1190年11月、「鎌倉殿」はついに上洛を果たします。頼朝このとき44歳。14歳で伊豆に流されて以来、30年ぶりの都でした。そして、後白河法皇が亡くなり、まもなく即位した後鳥羽天皇によって、頼朝は晴れて征夷大将軍に任命されました。大迫秀樹氏が著書『「鎌倉殿」登場! 源頼朝と北条義時たち13人』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

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    欧州征伐のターゲットは奥州藤原氏

    ■最後の総仕上げ、奥州征伐

     

    「いい箱」ができてから4年後。

     

    1189年、「鎌倉殿」頼朝は、奥州に潜む義経の追討に乗り出します。命の取り合いをした義経をこのまま生かしておくわけにはいきません。ただ、真のターゲットは義経ではなく、奥州藤原氏でした。

     

    義経をかくまっていた奥州藤原氏は、平泉を拠点とする〝黄金の独立王国〟を築き上げていました。3代藤原秀衡の時代には、朝廷を脅かすほどの一大勢力になっていたのです。世界文化遺産に登録された毛越寺の浄土庭園や黄金に輝く中尊寺の金色堂は、往時の繁栄ぶりをうかがわせます。

     

    東国の支配者「鎌倉殿」にとっても、北に隣接する奥州は無視できない脅威でした。なので、かねてから義経の追討を機に、奥州藤原氏を壊滅させようと画策していたのです。

     

    このとき、義経が父のように頼り慕っていた3代秀衡はすでに他界していました。頼朝は秀衡の子・泰衡に武力攻撃をちらつかせ、義経を引きわたすよう迫ったのです。泰衡は亡き父から〈義経を将軍に立て、平泉を守れ。

     

    頼朝に屈するな!〉という厳命を下されていました。しかし、このままでは朝敵になってしまいます。やむなく、義経が暮らす「衣川の館」を部下に襲撃させたのでした。義経31歳の死去。

     

    これにて奥州征伐の完了……。

     

    では、ありませんでした。「鎌倉殿」頼朝はみずから大軍を率いて、平泉に向かったのです。泰衡を討ち、奥州藤原氏を滅ぼすためです。

     

    勅許を得ないままの奥州征伐ですが、もはや「鎌倉殿」にはだれも逆らえません。合戦では畠山重忠が先陣を務め、千葉常胤や「13人」のひとりで朝廷から官位をたまわって罵倒された八田知家も加わりました。

     

    平泉は焦土と化し、陸奥国も出羽国も「鎌倉殿」の支配下に入りました。これにより、平氏に続いて、後顧の憂(あとあとの心配事)になりかねない奥州も壊滅させたのでした。

     

    奥州藤原氏の領地は畠山らの他にも、戦功をあげた南部光行、伊佐朝宗、千葉師常(常胤の子)らに分配されました。彼らの子孫は、戦国時代から江戸時代にかけて、東北地方の有力大名として各地を統治することになります。「鎌倉殿」頼朝は、徳川家康が確立する幕藩体制の種子もまいたのでした。

     

    ところで、名前が全く出てこない小四郎こと北条義時はどうしていたのでしょう?

     

    源平合戦にも奥州征伐にも従軍していますが、特筆すべき活躍はしていません。北条よりの歴史書『吾妻鏡』ですら目立った記述はありません。頼朝の信頼は厚かったようですが、このころの義時のことを「何もしない人」と6文字で片づける歴史家もいるくらいです。

     

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      ※本連載は大迫秀樹氏の著書『「鎌倉殿」登場! 源頼朝と北条義時たち13人』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

      「鎌倉殿」登場! 源頼朝と北条義時たち13人

      「鎌倉殿」登場! 源頼朝と北条義時たち13人

      大迫 秀樹

      日本能率協会マネジメントセンター

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