「過干渉」で子どもの経験を奪ってしまうケースが増加
また最近の保護者と接していて私が気になるのは、いわゆる「過干渉」といわれる関わりが増えていることです。過干渉とは文字どおり、干渉が過ぎることです。子どもが望んでいないことまで親が干渉して行動を制限したり、指示・強制をしたりするようなことを指します。
子どもは日々成長している存在ですから、その過程で大人が適切に支援していくことは大切です。どこまでが適切な関わりで、どこからが過干渉かは、明確な線引きが難しいところもあります。私の感覚では、子どもが自分でできるはずのことも、失敗を防ぐために親が先回りしてやってしまう、これも過干渉の一つではないかと思います。
例えば、中学生や高校生になっても、「今日の英検の試験は何時からでしたか」とか「うちの子が、自習室がうるさいと言っています」とか、受講生本人が確認や話をすればよいことで塾に保護者が電話をしてくる家庭があります。
「うちの子は忘れてしまうから」「口ベタで、自分では言いにくいようだから」と考えて親がフォローするのでしょうが、必要な準備が分からなくて困るとか、意見や要望を人に伝えるというのも、すべて経験です。私は中高生には「必要なことは、親に頼らず自分でするように」と指導しますし、同時に保護者にも「もう自分でできる年齢ですから、本人にさせてください」と、やんわり注意を促すこともあります。
塾への問い合わせ程度は大したことではないかもしれません。しかし、こうした過干渉や先回りが過ぎると、子どもが自分で考えて判断する、行動する機会を奪ってしまうことになり、結果的に自立を妨げる可能性があります。
親に求められる「支援」とは?
高校や大学に向けた進路相談や受験校選びでも、親子の関係について考えさせられることがよくあります。
一つは、やはり過干渉といえるケースです。「子ども本人に決めさせる」といいながら、親が自分の考えた進路を押し付けてしまうパターンです。
子どもの進路や将来について心配するのは、親として自然な感情だと思います。とはいえ、中高校生になった子どもの受験校や進路を親が決めてしまうのは違います。当塾でも時折、「志望校について相談したいので、子どもには内緒で塾と保護者で面談をしてほしい」と依頼されることがありますが、私は、それはお断りしています。本人の意向が分からないところで、大人だけで話をしても意味がないからです。
ちなみに、「子どもが志望校で悩んでいるようなので、塾で話を聞いてやってほしい」という保護者からの依頼は、まったく問題ありません。子ども本人の考えを尊重し、支援するサポートだからです。
気になる傾向のもう一つは、肝心なところで“逃げる”保護者がいることです。普段は過干渉なのにもかかわらず、志望校選びといった大事なポイントで「あなたが自分で選んだんでしょう。私が決めたわけじゃない」と突き放してしまうのです。
入学してから「親が勧めた学校に行って後悔した」と言われないために、予防線を張っているのかもしれません。しかし、親があとは知らないといわんばかりの態度でいると、子どもはどうしても不安になります。
決めるのは本人ですが、子どもは人生経験が少なく、適切な判断をする材料も限られています。なんとなく抱いた憧れや希望する方向があったとしても、決断できずに迷うことは多々あります。中学生くらいで「親がなんと言おうと、自分は絶対にこの進路を選ぶ」と主張できる子は少数です。
特に思春期前期の13歳ぐらいまでに、人生に関わる重要な決断を子どもに委ねるのは、重大なストレスになり得るという話も耳にします。高校受験が見えてくる14歳、15歳になったからといって、急に大人と同じように考えられるようになるわけでもありません。
私たち大人にできることは、子どもの考えを尊重しつつ、迷っているときには本人の話を聞き、思考を整理する過程に寄り添うことです。そして子どもが自分で考えて選んだ進路は、親として応援してあげてほしいと切に願っています。
大坪 智幸
株式会社花咲スクール 代表取締役、本部校教室長
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