(※写真はイメージです/PIXTA)

教育への関心が高まり、小学校低学年からの塾通いも珍しくない時代となりました。ただし一口に「塾」といっても、学習サービスの内容や質はかなり大きな差があります。「大手の塾なら安心」「とりあえず通わせるだけでも、少しは学力がつくだろう」と気軽に考える保護者も少なくありませんが、残念ながら実態はそうではないようです。塾講師として実際に指導している花咲スクール代表・大坪智幸氏が、塾業界の現状を解説します。

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多くの塾が「営利目的に走っている」という事実

今や、教育において不可欠な存在となっているのが、学習塾などの民間教育です。学校や家庭だけでカバーできない学力養成や受験指導を担うのが、民間教育の一つの大きな役割です。

 

特に高校受験を控えた公立中学生にとって、塾通いは必須になっています。各都道府県、各高校の入試の過去問を解いたことがある方なら分かると思いますが、高校受験は地域により、また高校により、選抜システムや入試の特色が異なります。公立中学校ではそうした受験指導への対応が十分にできなくなっています。地域性を考慮しながら、各進学先に合わせてきめ細かい受験指導ができるのは、もはや塾だけになっています。

 

近年、塾が担うのは「知育」だけではありません。人との関わり方や基本的マナー、社会性など、これまでは家庭や地域社会がその役割を担ってきた「徳育」においても、塾の存在は次第に大きくなってきています。現代において塾は、地域を支えるインフラとしての教育機関になっているといえます。

 

当塾のある埼玉県内だけでも、本当に多くの塾があります。経済産業省の「平成29年特定産業サービス実態調査報告書学習塾編」等から推計すると、埼玉県内の学習塾数は約3000軒。都道府県別では東京、大阪、愛知、神奈川に次ぐ5番目の多さです。ネットで少し検索をすれば、選びきれないほどたくさんの学習塾の名前が挙がってきます。

 

こうした状況下で子どもを伸ばす良質な塾をどう選び、活用していけばいいのかと戸惑う保護者は少なくないようです。

 

しかし、実は一口に塾といっても、学習サービスの内容や質はかなり大きな差があります。「なんとなく大手の塾なら安心」「どんなところでも塾に行けば、少しは学力がつくだろう」と気軽に考える保護者も少なくないようですが、残念ながら実態はそうではありません。

 

実は当塾は、「2番目の塾」として選ばれる傾向があります。1番目に大手塾に通ったけれど思ったような効果を得られず退塾、そして地域の口コミなどでたどり着いたのがうちの塾なのです。きょうだいの下の子(第2子以降の子ども)が多いのも同じ理由です。上の子のときは大手塾に通っていたけれど、やっぱり「違う」と感じた経験がある家庭が多いのです。

 

そういう家庭は、入塾面談の際、「前に通っていた塾がいかにひどかったか」を私たちに滔々と話します。他社のことで私たちが代わりに怒られるのは少々理不尽ですが、保護者の思いはとてもよく理解できます。

 

本来であれば、塾業界の一事業者として業界を敵に回すようなことは、私もしたくはありません。しかし業界の内部を知るものとして、子どものため、そしてわが子を思う親のためを思うと、ただ黙って見過ごすことはできません。多くの塾が、教育機関の看板を掲げていながら、およそ教育とは呼べない営利目的に走っている――この“不都合な真実”はもっと公にされるべきだと思うのです。

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※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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