自分のやるべきことを認識する大切さ
その後、ベストセラー『7つの習慣』で知られるフランクリン・コヴィー・ジャパンに移られたのも、ナイトカストーディアルとして働いた経験から「何ごとも原則が大事」だと実感されたからでしょう。
同社で代表取締役副社長を経て、1999年にご自身で、人の教育・育成やお客様の満足度を上げるためのコンサルティングを行うヴィジョナリー・ジャパンを設立されたというわけです。
集団スポーツについては、鎌田さんご自身がやられていたわけではないそうですが、8年間、他の人が進んではやらないような部門で働いたりする中で、自分の仕事の意義や役割をしっかり認識する大切さを実感されたようです。これらは、まさしく集団スポーツで得られるメリットと同じです。
また、鎌田さんはかつて商社に勤められていました。ご存じの方もいると思いますが、商社というのは比較的体育会系というか、先輩後輩、上司部下の規律が厳しく、時には理不尽なことをこなさねばならないこともあります。そうした環境下でもしっかりと、仕事に前向きに取り組んでこられたことも、鎌田さんのキャリア形成に影響しているのだと思います。
組織や集団のこと、全体のことを考えて、その中で自分のやるべきことをしっかり認識する大切さを、鎌田さんは商社勤務時代とディズニーランドでの最初の8年間で会得したのだといえます。
歯列矯正については、アメリカでは当たり前のことですから、現地での研修時などに話題に出たであろうことは想像に難くありません。そこで、歯列矯正の必要性を痛感され、やるべきことの一つに「歯の矯正」を挙げてくださったのでしょう。
実際、鎌田さんの息子さんも、中高生の頃に歯列矯正されたそうです。私と鎌田さんが知り合う以前のことです。
鎌田家では、やはり「英語の勉強は大事」と、ご長男はアメリカ留学を見据えていたようで、となると歯列矯正も必要だと判断し、実際に治療されたということでした。ちなみに私が鎌田さんと最初に出会ったのは、とある経営セミナーに参加した時です。セミナー講師の一人に鎌田さんがいらっしゃいました。
私は矯正歯科医ではありますが、以前から経営者の心構え、言ってみれば、“生き様”や人間性といった側面に関心があり、歯科医師としての仕事には直接関係がないさまざまな経営セミナーに顔を出していたのでした。もちろん、今でも歯科業界のセミナーだけでなく、各種の経営セミナーに参加しています。
そんなわけで、それ以来、意気投合した鎌田さんとはお付き合いが続き、さまざまなことを学ばせていただいています。
■海外一流ホテルで「地道な皿洗い」を続けていた高野登さんのこと
高野さんも、ホテルマンとしてさまざまなストーリーを持つ方です。
ホテルスクールを卒業してからすぐにアメリカに渡り、スタットラーヒルトン(ニューヨーク)、ザ・プラザ(ニューヨーク)、フェアモント サンフランシスコ(サンフランシスコ)など著名ホテルの勤務を経て、ザ・リッツ・カールトン サンフランシスコの開業に携わり、日本支社長に就任されたのち、現在は「人とホスピタリティ研究所」を立ち上げて、人間関係に伴うコミュニケーションをテーマとした講演やセミナーなどを行っています。
高野さんは、英語はほぼわからない状態から、現場での実践で力を磨いてこられた方ですから、英語を身につけることがいかに大切か、身をもって感じられています。ですから、私の投げかけにも、まず「英語を勉強すること」を挙げたのでしょう。
集団スポーツのような団体活動を勧めるのには、高野さんご自身の、こんなご経験があります。
高野さんは1970年代、20代前半に渡米し、最初に就いた仕事はホテル内のレストランの洗い場係でした。その職場で働くのはほとんどが南米の人たちで、英語もままならない人が多かったそうです。
そうした、いわば誰もが進んではやりたくないような職場の担当になったら、たいていの若者は「こんなところでは働きたくない」「自分は実力があるのだから、もっと違う仕事がしたい」と思うでしょう。