写真:PIXTA

コロナ禍からの回復が鮮明になるフィリピン。一方でインフレ懸念が蔓延し、フィリピン総合株式指数も一時大台の7,000を割り込みました。引き続きボラティリティーの高い不安定な状態は続きそうです。最新のフィリピン経済と株式市場について、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が解説します。

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海外マネーが再びフィリピンへ

 

フィリピン中央銀行(BSP)によると、海外からの直接投資(FDI)の純流入は2021年11月はほぼ倍増し、2021年の11か月間累計では92.4億ドルに達し、2020年の60億6000万ドルよりも31.8億ドル・52.5%増加しました。

 

BSPは、FDIの流入は2020年の同じ月の5億9900万ドルから11月には10億9000万ドルに増加し、2021年7月に記録された12億8000万ドル以来最高になったと発表しました。

 

フィリピン中央銀行総裁・ディオクノ氏によると、11月の純流入額は、グローバル企業がフィリピンの子会社・関連会社に多くの資金を貸付金という形で注入し続けた結果で、対前年109.3%増加して8億9600万ドルに達しました。

 

現地で得た収益からの再投資は25.2%増加して8,100万ドルになりました。また、資本への注入額は78.8パーセント増加して1億1800万ドルになりました。

 

米国と日本からの資本流入額は、37.9%増加して8,100万ドルになり、製造業、不産産、金融、保険業界に向けられました。

 

一方、昨年11月のフィリピンからの資本流出額は、52.8%減の1400万ドルでした。2022年、BSPはコロナ後の経済再稼働・回復から、85億ドルの純FDI流入を見込んでいます。

 

堅調な海外直接投資の流入はフィリピン経済にとって明るい兆しです。共和国法11534・企業回復税制優遇措置(CREATE)法による法人税5%削減や小売業自由化法、公共サービス法による海外資本規制の緩和策などにより、海外からの投資に弾みがついたと見られています。記録的な低金利から金利の上昇傾向への転換により、多くのグローバル企業が、新規投資や拡張プロジェクトのための資金調達活動に積極的に取り組んだという側面もあります。

ウクライナ危機がフィリピンにもジワリと影響

 

ロシア・ウクライナ危機による高インフレが消費支出に影響を与え始めています。現在進行中の戦争は引き続きフィリピンのGDPに影響を与え、高いインフレ率により今年の目標である7~9%のGDP成長率の達成は難しくなるかもしれません。この地政学的リスクの高まりにより、経済成長率は5%程度に引き下げられる可能性も出てきました。

 

戦争により、商品価格と食料価格は引き続き上昇する見込みで、これに伴い、経済の約7割を占める家計消費は大きな打撃を受ける可能性が高く、通常、大統領選挙期間中は家計消費が大きく伸びますが、物価の上昇は消費の足かせになる可能性があります。

 

ガソリン価格の高騰により、フィリピン庶民の足であるジープニーのコストの上昇圧力があり、コスト上昇に耐えるために、ジプニー事業者は燃料補助金を政府に懇願しています。ジプニーやバスはディーゼルに依存しており、平均価格は昨年に比べ44%上昇し58.65ドルになりました。農家が使用する交通費も高くなっています。農家への5億ペソの補助金とジプニー事業者への25億ペソの補助金が準備されています。

 

インフレ圧力は高まっているものの、マニラ首都圏と国内のほとんどの地域がコロナによる行動規制警戒レベル1に緩和されているため、パンデミック規制が緩和されれば、国のGDPに弾みがつく可能性があります。COVID-19の感染者がこのまま減少すれば、いつかは警戒レベル0に引き下げられ、より多くの経済活動が行われることになります。

 

ロシア・ウクライナ戦争で資源・商品価格が高騰し、その後下落調整していますが、こちらの方は、ある程度のレベルで高止まりしそうな様相を呈していますので、経済活動には一定の足枷要因となりそうです。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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