(※写真はイメージです/PIXTA)

個人事業主であっても、消費税を納めるかどうかは、売上額が1,000万円以上あるかどうかによって決まります。「売上がぎりぎり1,000万円を超えて、課税事業者になってしまった」という経験をされた方もいるのではないでしょうか。ここでは税務調査を専門とする税理士法人松本が、個人事業主が売上1,000万円以下で申告し続けている場合、消費税の脱税を疑われる可能性について解説します。

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意外と知られていない「消費税」の仕組み

消費税は、国民にとってもっとも身近な税金であり、ほとんどの人が払った経験を持つ税金でもあります。

 

身近であるにも関わらず、消費税の仕組みについては、よくわからない人も多いものです。消費税は、以下のような仕組みで納められることとなっています。

 

■消費税が国に納められるタイミングは「申告時」

私たちが普段買い物などでお店へ支払う消費税は、正確には支払い先の店舗や会社へ消費税を預けていることになります。

 

会社やお店では、商品の販売時に受け取った商品代金と一緒に消費税を預かり、申告時期にまとめて国へ納めます。

 

しかし、消費税に適用されている「原則課税制度」によって、お店や会社、個人事業主などは、消費税を納めなくてよい場合があるのです。

 

■消費税に適用されている「原則課税制度」とは?

消費税の原則課税制度とは、売上に含まれる消費税額から、仕入れや経費に含まれる消費税額を差し引いて計算する制度のことです。

 

例えば、売上100万円に対して10万円の消費税を預かり、仕入れや経費で50万円かかり、消費税を5万円支払っている場合、国へ納める消費税は10万円-5万円=5万円ということになります。

 

■課税売上「1,000万円以下の事業者」は消費税の納税免除

また、上記のように5万円の消費税を納める必要がある場合でも、全体の課税売上が1,000万円を超えていなければ、消費税の納税が免除される制度もあります。

 

このため、課税売上が1,000万円を超えるかどうかは、個人事業主にとっては重要なラインであるといえるでしょう。

いつも「売上1,000万円未満」で申告し続けると…?

課税売上が1,000万円を超えると、その翌々年から消費税の課税対象事業者となり、原則課税制度によって発生した消費税を納める必要があります。

 

もし売上を1,000万円以下でいつも申告している場合、個人事業主でも消費税の脱税を疑われる可能性はあるのでしょうか。

 

■帳簿操作をしている場合は税務署にバレる可能性大

実際に売上が1,000万円に満たないのではなく、消費税の納税を避ける目的で売上を少なく申告している場合には、税務署にマークされている可能性があります。

 

税務署では、売上額以外にかかった仕入れや経費など、あらゆる角度から申告書を分析することが可能です。

 

同じ業種や同じ規模の事業と比較した場合に異常値が出ていたり、実際の売上額と申告した額が合わなかったりする場合には、税務調査の対象となる可能性があるでしょう。

 

■連年「ぎりぎり1,000万円以下」で申告している場合も要注意

売上がぎりぎりで1,000万円以下となるような申告を連続して続けている場合も、消費税の課税事業者になるのを避ける目的で、帳簿を操作している可能性を疑われやすいでしょう。

 

税務調査で過少申告を指摘された場合、修正申告で消費税の課税事業者となれば、所得税に加えて消費税の納税義務も発生します。それだけでなく、過少申告加算税や無申告加算税などの追徴課税がペナルティとして課せられることとなるのです。

「売上1,000円以上」で申告していても要注意

「うちはしっかり売上1,000万円以上で申告しているし、消費税も納めているから問題ない」という個人事業主の場合も、以下のようなケースは注意が必要です。

 

■差し引きできる仕入れ額には条件がある

消費税の課税事業者となった場合でも、原則課税制度を悪用して消費税を脱税している可能性を疑われる場合があります。

 

例えば、課税仕入額のうち、売上の消費税から差し引きするためには、仕入先名称や日付、品名や名目、金額などが記載された請求書と帳簿が必要となります。

 

こうした書類が揃っていない仕入れについては、架空請求として水増ししている可能性があるからです。

 

売上を正しく申告していても、仕入れや経費にかかった額を多く申告し、消費税や所得税を低くするのは脱税行為にあたります。税務調査で指摘を受ければ、修正申告を求められるため注意しましょう。

 

■そもそも申告をしていない

「申告しなければ、課税事業者になることや過少申告を追及されることもないだろう」と考えて、申告自体をしていない無申告状態の個人事業主の方もいらっしゃいます。

 

しかし、こうした無申告の状態こそ、税務署のターゲットとなりやすいのです。特に売上が1,000万円を超えるような個人事業主は、税務調査の対象としてチェックされている可能性が高くなります。

 

無申告であったとしても、取引先の履歴や第三者からの密告、タレコミなどにより、無申告状態は税務署に把握されてしまいます。

 

特に「周囲にも無申告の同業者が多い」「確定申告の話を聞いたことがない」という人は、過去何年にも遡って税務調査を受け、多額の税金を払わなければならない可能性が高いでしょう。

 

■不安な場合は専門家に相談

税務署では、無申告の個人事業主が多い業種や、税務調査で発覚する申告漏れの額が大きい業種などの情報も細かくキャッチしています。

 

少しでも過去の申告内容に不安を感じる場合は、今すぐ税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

 

<まとめ>

個人事業主であっても、課税売上が1,000万円を超える場合には、消費税の課税事業者として、消費税を納める必要があります。消費税には原則課税制度が適用されるため、売上消費税から仕入れ消費税を差し引いた額を納めることとなりますが、差し引きできる仕入れや経費には既定の項目が記載された請求書の存在など、一定の条件があります。

 

ぎりぎり1,000万円を超えない売上でいつも申告をしていたり、そもそも申告自体をしていなかったりする場合には、既に税務署のターゲットとなっている可能性が高いです。

 

過去の申告に不安があるなら、個人事業主の申告について親身に対応してくれる税理士事務所へ早めに相談してみましょう。

 

 

税理士法人松本

 

 

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※本記事は、税理士法人松本のブログより転載したものです。

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