(※写真はイメージです/PIXTA)

給付金目当てで確定申告したら、税務調査が来る…この噂は本当なのでしょうか? コロナ禍は今冬にも第6波が到来すると言われ、収束の目途は立っていません。本稿で解説する給付金の中には、すでに申請期限が終了したものもありますが、コロナ禍が長期化する中では今後、再支給や申請再開も考えられるでしょう。どんなときに税務調査の対象となりやすいのか、税務署が「怪しい」と思う申告とはどのようなものか。税務調査を専門とする税理士法人松本が解説します。※本記事は、税理士法人松本のブログより転載したものです。

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「給付金目当ての確定申告」は税務調査の対象?

コロナ禍で営業や経営が思うようにいかない個人事業主の方の中には、各種給付金の申請を検討している方も多いことでしょう。

 

国や地方自治体が実施している給付金の申請には、前年度の確定申告が必要となるケースがほとんどです。給付金の支給を目的に確定申告をした場合、そのことで税務調査がやってくることはあるのでしょうか。

「コロナ禍で支給される給付金」は様々

コロナ禍で支給される給付金には、以下のようなものがあります。

■持続化給付金

コロナウイルスの影響により、前年度に比較して50%以上売上が減少した事業者が申請できる給付金です。個人事業主で100万円、法人で200万円が支給されます。

 

申請には前年度の確定申告書類のほか、売り上げの減少がわかる帳簿のコピーなどが必要です。

 

※書類提出期限は2021年2月15日で終了しています。

■営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金

緊急事態宣言や蔓延防止措置が発出された地域において、時短営業や休業の要請に従った場合に申請できる協力金です。申請期限や条件、支給額については、各地方自治体によって異なります。

 

協力金の申請には、営業許可証や誓約書のほか、前年度の確定申告書控えも必要です。

■家賃支援給付金

コロナウイルスの影響で売上が減少し、家賃の支払いが困難となっている事業者へ支給される給付金です。

 

申請には賃貸契約書の写しや売上の減少を証明する書類のほか、前年度の確定申告書控えが必要となります。

 

このほかにもさまざまな補助金や助成金などがありますが、法人や個人事業主として申請する場合には、基本的に売上や所得を証明する書類の提出が必要です。

給付金のため「前年度のみ確定申告」は疑われて当然

各種給付金を支給するために確定申告をした場合、必ず税務調査がやってくるのでしょうか。

■前年度のみ確定申告した場合は疑われやすい

コロナ禍で支給される給付金の申請は、多くの場合前年度の確定申告書類が必要となります。言い換えれば、長年無申告状態であった人でも、給付金の申請目的で前年度のみ確定申告をすれば申請に必要な書類は揃うため、給付金の申請や給付を受けることはできるでしょう。

 

しかし、前年度よりも前の年度について無申告であったり、支給を受けて以降の確定申告をしていなかったりする場合には、税務署に無申告であることを疑われやすいのです。

 

現に、当社にも給付金の申請をして税務調査が入ったお客様からのご相談をいただいております。

■無申告が疑われる場合は税務調査の対象に

給付金の申請書類を揃える目的で、1期分のみ確定申告をした状態について、税務署は「この年だけ確定申告しているのは何故だろう」と考えるのは自然なことだといえます。「前年度以前や以降について無申告状態ではないのか」と疑われてもおかしくないのです。

 

無申告が疑われる事業者がいれば、税務署は税務調査の対象とします。長年にわたって無申告が続いている可能性があると思われれば、早い段階で税務調査の連絡を受けることもあるでしょう。

「給付金目当ての確定申告」は想像以上にバレやすい

「税務署は忙しいから、個人の申告書類をいちいちチェックしないだろう」と考えたくなるかもしれません。確かに、税務署でもすべての申告書類を細かくチェックするのは難しいでしょう。

 

しかし、日々さまざまな申告書類に目を通していれば「何か怪しい」「これはおかしい」といった違和感を税務署の担当職員が持つことは、素人よりも難しいことではありません。

 

無申告や給付金目当てで提出した確定申告書類には、毎年しっかりと申告している書類よりも目立ちやすいものです。

 

こうした怪しい申告書類を見抜く視点に加え、税務署独自のルートや第三者からの密告などで、不正の疑いがある法人や個人事業主は絞り込まれていきます。

無申告ペナルティは重い…税務調査リスクを減らすには

無申告の期間が長いと、重加算税などの追徴課税が徴収され、通常の税金よりも多額の納税義務が発生します。税務調査で指摘を受けて修正申告をした場合、支給された給付金を上回る税額を現金で一括払いしなければならないケースもあるのです。

 

給付金の申請や支給を受けるために確定申告をする際には、以下のような点を守ることで、税務調査のリスクを減らすことが可能です。

■無申告の期間があれば遡って申告する

給付金の申請時に確定申告をするのであれば、前年度分に限らず無申告の期間はすべて遡って確定申告しましょう。無申告期間が長ければ重加算税の課税対象とはなってしまいますが、自主申告した場合は税務調査で指摘を受けて課税されるよりも低い税率に抑えられ、追徴課税でもっとも重い重加算税の課税も回避することができます。

 

そもそも確定申告は給付金とは別物であり、コロナ禍や給付金の申請・支給とは関係なく毎年済ませるべきものです。1人で数年分の確定申告書類を準備するのが難しい場合は、個人の確定申告相談に対応している税理士へ相談するなどして、これを機会に正しい申告と税金の知識を身につけましょう。

■虚偽の確定申告をしない

給付金の申請では、コロナウイルスによる影響で売上が減少しているとわかる資料が必要となります。前年同月と比較して、一定の割合で減少していることがわかれば申請可能であるものが多いため、売上があった日付を操作して記帳したいと考える場合もあるでしょう。

 

しかし、実際に入金された銀行の日付と帳簿上の日付が異なっていたり、実際よりも売上を少なく申告したりする行為は虚偽にあたります。

 

税務署では個人や法人の銀行口座を調査することもできるため、こうした虚偽の申告が疑われれば、税務調査が入る可能性も高まるでしょう。

 

<まとめ>

コロナ禍ではさまざまな給付金や支援金制度が実施されており、多くの場合申請や支給には前年度の確定申告書類が必要となります。

 

給付金目当てで確定申告をすること自体が税務調査の理由とはなりませんが、前年度よりも前に無申告の期間がある、給付金目当てで不正申告をしているといった疑いを持たれれば、それを理由に税務調査がくる可能性は高いでしょう。

 

給付金の申請と確定申告は別物であると考え、これを機会に無申告期間をなくして、節税対策や正しい税金の知識を身につけることをおすすめします。

 

 

税理士法人松本

 

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