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自筆証書遺言は、一定の要件に従って自筆で書く遺言書で、一人でいつでも作成できます。しかし、本当に被相続人が遺言書を書いたかどうかを立証する手段がなく、遺言書が他の人によって偽造されるケースもあります。遺言書の偽造が疑われる場合にはどのような対応をすればよいのでしょうか。みていきましょう。

遺言書が偽造されて裁判になった場合の有名な判例

遺言書が偽造されて裁判になった場合の判例を紹介します。

 

【判例1】高松高裁平成25年7月16日

●遺言者は脳梗塞を発症して文字を書くことが困難であったにもかかわらず、自筆証書遺言が作成されていた。

 

自筆証書遺言の筆跡と遺言者が書いた筆跡(遺言作成時と同時期に遺言者が差し出した年賀状)を比較したうえで、遺言は自筆で書かれたものではないとして無効とされました。

 

【判例2】松山地裁平成17年9月27日

●遺言者は認知症を患って意思表示ができない状態であったにもかかわらず、自筆証書遺言が作成されていた。

 

自筆証書遺言の筆跡と遺言者が書いた筆跡は異なるという筆跡鑑定結果と、遺言が作成された時点の遺言者の認知症の程度から、遺言は遺言者が自ら書いたものではなく無効であると判断されました。

 

【判例3】最高裁昭和62年10月8日

●遺言者は白内障による視力の減退と、脳動脈硬化による手の震えから筆記が困難であった。

●一文字ずつ文字を声に出して確認しながら遺言者自身が手を動かして自筆証書遺言を書き上げたが、妻に手を握らせて補助を受けていた。

 

自筆証書遺言は整然と書かれていて、遺言者の健康状態から見て妻が支えていただけとはいえない状態でした。自筆証書遺言は妻の積極的な意思で筆記されたと判断され、無効とされました。この例は遺言書の偽造とまではいえませんが、自書要件を満たしていなければ自筆証書遺言が無効となるケースとして紹介しました。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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