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日本人男性の「3人に1人」が脂肪肝!?
脂肪肝という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。脂肪肝とは、肝細胞内に中性脂肪が異常に蓄積した状態のことをいいます。有名なものに、餌をたくさん食べて肥大したガチョウやアヒルの脂肪肝フォアグラがあります。人間の肝臓もさまざまな原因で脂肪肝になります。
でも私は太っていないし、お酒もたしなむ程度だから心配ないという人もいるかもしれません。確かに脂肪肝は肥満者やアルコールの飲み過ぎの人がなりやすい病気です。しかも放っておくとさまざまな疾患や老化につながっていくことも明らかにされてきています。
もともと脂肪肝は、肥満患者の多いアメリカではじめに注目されました。それが近年では日本でも患者数が多くいることが分かってきたのです。
衝撃的なのは、日本人の成人男性の3人に1人が脂肪肝と推定されていることです。これは血液中の脂質の値が高い状態である脂質異常症と同じくらいの割合になります。
放置すれば「肝硬変」、最終的には「肝がん」まで進行
脂肪肝は単に肝臓に脂肪が蓄積しているというだけではなく、いわば肝臓のメタボリック症候群と言えます。メタボが糖尿病や高血圧、動脈硬化、脂質異常症などさまざまな病気に関連することは広く知られています。それらと同じく、肝臓に脂肪がたくさん溜まってくるといろいろな悪い影響が出てきます。肝臓では慢性的に炎症が起こるようになり、次第に線維化といって肝臓の組織が硬くなっていきます。そして脂肪肝の原因となっている肥満や生活習慣が改善されず、症状が進行した場合、最終的には肝硬変や肝がんといった深刻な肝臓病に至ることもあります。
このような状況のなか、日本肝臓学会は2008年頃から本格的に脂肪肝の対策に取り組み始めています。例えば肝疾患に対する啓蒙活動、肥満の警告、運動習慣の実施の呼びかけなどです。
けれども脂肪肝になっていても多くの人には自覚症状がなく、詳しい検査を受けない限り脂肪肝と診断されないので見過ごされてしまっているのが現状です。これが脂肪肝が侮れない理由の一つです。
長年放置して肝硬変の段階まで行ってしまうと、肝臓の機能が大幅に低下して元に戻らなくなります。さらに悪化すると肝がんとなり、命を落とすリスクさえあります。