(※写真はイメージです/PIXTA)

脂肪肝と一言でいっても、レベルはさまざまです。まだ生活習慣病は発症していないけれど、脂肪肝だけはあるという人、このままの生活が続けば将来脂肪肝という予備群の人も少なくありません。軽症の単純性脂肪肝のうちなら、十分引き返せます。減量も比較的楽です。だからこそ脂肪肝に気づいたら、即予防と生活改善を図ることが肝要です。本稿では主に「運動」に着目し、脂肪肝を改善するポイントを見ていきましょう。

脂肪肝の改善には「食事療法+運動療法」がオススメ

摂取カロリーが消費カロリーを上回る生活を続けていると、余った分が体脂肪として蓄積され、肝臓にも脂肪が溜まりやすくなります。

 

食べる量を大幅に減らすことで、コントロールする(脂肪を減らす)ことはできますが、短期間に減量しようとすると体に負担をかけ、リバウンドにもつながります。溜まった脂肪は速やかに、かつ適度に減らすことを心がけましょう。リバウンド防止や体への負担を考えて食事療法と運動療法を組み合わせることを推奨します。

 

運動による減量の効果が出るまでには、その人の生活や体格などによっても異なりますが、時間がかかります。じっくり取り組みましょう。しばらく運動をしていなかった人には、キツイかもしれませんが、徐々に全身の代謝が良くなっていくことで肝臓からも脂肪が代謝されていきます。また体に筋肉がついてくれば基礎代謝もあがります。

少し汗ばむくらいの運動を1回30分以上、週3回程行う

内臓脂肪の燃焼には、酸素を使いながら体を動かす「有酸素運動」が効果的です。キツ過ぎず楽過ぎず、少し汗をかく程度の運動強度を目標にしてください。速歩ウォーキングやサイクリング、スイミングなどが取り入れやすいでしょう。

 

脂肪肝の研究では、1日30分以上の3〜6メッツの運動を週に250分以上、約3ヵ月行うことで、たとえ体重が減らなくても脂肪肝が改善したという結果が出ています。

 

「メッツ」と、は運動強度を表す単位のことです。大まかな目安としては、平均的な速度で歩く、軽い筋トレをする、掃除機をかけるなどは3メッツ程度、やや速歩で歩く、自転車に乗る、階段をゆっくり上るなどは4メッツ程度、水中歩行(やや速い)は4.5メッツ、ゆっくりとしたジョギングやスイミングは6メッツ程度になります。

 

以上から早歩きウォーキングや軽いジョギングなど、少し汗ばむくらいの運動を1回30分以上(できれば1時間以上)し、それを週3回程度行うといいでしょう。私自身は、週3日は、犬の散歩などを利用して1万歩以上歩くように心がけています。

 

運動することにより、脂肪肝が遊離脂肪酸(通常は脂肪組織に中性脂肪として蓄えられている)となり血液中に放出されるようになって、肝臓に溜まった脂肪を落としやすくなります。遊離脂肪酸がエネルギーとして利用されるようになるのは、運動開始10分後からなので、1度の運動は10分以上続けて行うといいと思います。時間がない方や運動を始めたばかりの方は、1日5分でも体を動かす習慣をつけるとよいでしょう。

 

さらに筋肉に負荷をかける無酸素運動(ダンベル体操やスクワットなど)を取り入れると、筋肉量が増えて基礎代謝も高まるので理想的です。

 

運動は動脈硬化の予防にもなり、インスリンの働きを高めるアディポネクチンというアディポサイトカインの一種の分泌が増えるため、高血圧症や糖尿病の患者にも有用です。

体重を毎日計測し、記録する

体重計にこまめに乗って体重をチェックすることは、いい心がけだと思います。

 

体重が右肩上がりになっていないかどうか、または体脂肪や筋肉量をチェックすることで、体調管理や食べ過ぎたかどうかなどを見る指標になります。ただし体脂肪や筋肉量は、少し水分を取らないだけでも変動するものですから、少し減った・増えたぐらいで一喜一憂する必要はありません。

 

1日1回、体重を毎日計測し、記録しておきましょう。近頃は、スマートフォンのアプリで体重の増減を管理できるようなものも出ていますね。目標達成は慌てずに、4週間ぐらい先を目途に設定するとよいでしょう。緩やかでも確実な変化のほうが、体に優しく継続できます。BMI値25未満(理想は22)を目標にしましょう。

 

 

川本 徹

みなと芝クリニック 院長

 

 

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※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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