情報開示による「市場心理好転」が狙いか
これらの超短期決算は、自社株とマーケット全体の不安定化を踏まえた措置との見方がある。
「企業は株価動向を論ずることができない。しかし経営状況を報告することはできる」とうそぶく市場関係者も出てきた。積極的な情報開示で市場心理を好転させるという狙いだろうか。
これに対する私の感想は「いや、報告は当たり前のことなんですけど。だったら最初からどんどん開示してくださいよ」程度だけど。気合半分の行為とも言えるが、その“気持ち”が株価に反映されるから中国株は分からない。
代表的な例は永輝超市(601933)。上海総合指数が一時4%超下落した3月9日、同社株は逆行高を演じ、ストップ高で取引を終えた。同社は前日引け後、1~2月期での黒字計上を発表。
21年12月期は赤字転落の見通しだが、ここに来ての業績回復が好感されたのだろう。11日にも株価は6%上昇した。まぁ、「21年通期決算すら未発表なのに、1~2月期決算を出してくるのは順番が違うじゃないか」という真っ当な意見もなくはない。
貴州茅台酒は21年12月期での「11.2%前後増収11.3%前後増益見通し」を公表済だが、正式発表はこれからだ(これまでは3月末から4月中旬にかけて発表することが多い)。
もっとも、このようなマジメな声は「せっかくイイ情報を発表しているんだから、まぁええじゃないか」という市場の空気でかき消されてしまう。時として理よりも情が優先されやすい社会なのだろう。
さて、白酒大手の宜賓五糧液(000858)も3月9日引け後に決算を発表した。こちらは「1~2月期」ではなく「21年12月期」。今さらながら昨年は「15%前後増収・17%前後増益見通し」と明らかにしたのだ。
え、チョット待てよ……。取引所の規定には「通期見通しの提出期限は1月31日」とある。なぜ規定違反とも捉えかねないこのタイミングで出してきたのだろうか? 大いに疑問が残る。
まさか「周囲のノリに合わせてウチも何か出さねば」という安易な発想にかられたワケではあるまい。ここら辺の理由開示もハッキリ行ってもらいたいところだ。何でもアリの中国株ということは分かっているんですが。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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