大企業・製造業・業況判断DI+8程度と、12月調査の+18から低下を予測
大企業・非製造業・業況判断DIは+3程度と、12月調査の+9から低下を予測
●3月調査日銀短観では原材料価格の上昇と部品の供給制約に加え、調査票送付日の2月24日に発生したロシアのウクライナ侵攻の世界経済に対する悪影響への懸念により、大企業・製造業の業況判断DIが+8程度と12月調査の+18から10ポイント程度低下すると予測した。21年3月調査の+5以来の低水準である。
●また、大企業・非製造業の業況判断DIは+3程度と、こちらは12月調査の+9から6ポイント程度低下するとみた。まん延防止等重点措置発令の影響が出るとみた。
●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(3月調査)やロイター短観(3月調査)などを参考にした。
●3月15日に発表されたQUICK短観3月調査の調査期間は3月1日から3月10日である。製造業の業況判断DIは12月調査の+19から6ポイント低下し+13となった。また、非製造業の業況判断DIは12月調査の+22から4ポイント低下の+18となった。
●3月16日に発表されたロイター短観3月調査の調査期間は3月2日から3月11日である。3月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の+22から14ポイント低下し+8になった。また、3月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の+30から15ポイント低下し+15になった。
●ロイター短観3月調査400社ベースの非製造業の業況判断DIは12月調査の+6から7ポイント低下し▲1になった。3月調査200社ベースの非製造業の業況判断DIは12月調査の+19から9ポイント低下し+10になった。
●なお、今回の日銀短観での回答期間はロシアのウクライナ侵攻が始まった2月24日~3月31日で、多くの回答が集まる回収基準日は3月11日ということである。新型コロナウイルスの第6波の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻を企業がどう判断するか、さらに業種により影響の違いが出るかなどが注目される。
●なお、3月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通り+8程度なら12月調査の「先行き見通し」+13を5ポイント程度下回ることになる。事前の予想より景況感が下振れたことになる。また大企業・非製造業が予測通り+3程度なら、12月調査の「先行き見通し」+8を5ポイント程度下振れたということになろう。
●QUICK短観3月調査の製造業の6月までの「先行き見通し」は+10で3月実績の+13より3ポイント低下の見込み、一方、非製造業の6月までの「先行き見通し」は+20で3月実績の+18から2ポイント改善予想である。
●一方、ロイター短観3月調査の6月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+11と3月実績の+8から3ポイント改善の見込み、製造業・200社ベースで+21と3月実績の+15から6ポイント改善の見込みである。一方、非製造業・400社ベースの6月までの「先行き見通し」は+10と、3月実績の▲1から11ポイントの改善の見込み、非製造業・200社ベースで+22と3月実績の+10から12ポイント改善の見込みである。
●日銀短観の大企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にして、製造業は3月実績比変わらずの+8程度、非製造業は3月実績比7ポイントの改善の+10程度と予測した。
●3月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が▲5程度と12月調査の▲1から4ポイント程度悪化すると予測した。非製造業は12月調査の▲4から2ポイント程度悪化し▲6程度になるとみた。この予測値は、景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。
●参考データの景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が21年9月調査41.3、10月調査44.3、11月調査47.6、12月調査46.5、22年1月調査43.9、2月調査42.1と推移している。
●一方、非製造業は21年9月調査37.4、10月調査43.1、11月調査47.7、12月調査46.8、22年1月調査41.0、2月調査39.1と推移している。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく、参考データの現状水準判断DIの方を重視した。
●日銀短観の中小企業・製造業の業況判断DIが▲5程度と予測通りなら、12月調査の「先行き見通し」の▲1より4ポイント低い水準で、事前の見通しより良くなかったことになろう。また中小企業・非製造業が▲6程度と予測通りなら、12月調査の「先行き見通し」の▲6と同じになる。景況感が事前に思ったとおりに悪化したことを意味しよう。
●日銀短観の中小企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、製造業で3月実績比3ポイント悪化の▲8程度、一方、非製造業は3月実績比3ポイント悪化の▲9程度と予測した。中小企業・非製造業では先行きをいつも慎重にみるというクセも考慮した。
●日銀短観の設備投資計画の予測には、他の設備投資計画調査、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DIや、過去の修正パターンなどを参考にしている。他の設備投資計画調査を見ると、法人企業景気予測調査の全産業の計画は10~12月期では前年度比+5.3%だったが1~3月期では2.9ポイント下方修正され、+2.4%になった。
●21年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+5.6%程度と予測した。12月調査の同+9.3%から増加率が鈍化すると予測した。法人企業景気予測調査の全産業の計画が下方修正されていることや、過去の修正パターンでは大企業は12月調査から3月調査にかけてやや鈍化することなどを参考にした。
●21年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比+5.5%程度と、12月調査の同+5.1%からやや上方修正されると予測した。中小企業の設備投資計画は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向がある。今年度も3月調査は12月調査より小幅改善するとみた。
●22年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+1.2%程度と予測した。22年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲14.6%程度と予測した。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年3月調査 日銀短観 予測』を参照)。
(2022年3月16日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト