(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

実質GDP成長率は前期比年率+4.6%に第1次速報値+5.4%から下方修正

 

実質GDPのコロナ禍前のピークの19年7~9月期越えは22年度入り後の可能性大

 

輸送機械・ダミー変数設定の影響や、中堅・中小・設備投資の断層補正の影響大?

 

 

●21年10~12月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比+1.1%、前期比年率+4.6%となり、第1次速報値の前期比+1.3%、前期比年率+5.4%から下方修正となった。法人企業統計を受けての設備投資の実質・前期比が下方修正された。また、個人消費、住宅投資、政府消費、公共投資、輸出、輸入の実質・前期比が下方修正された。

 

●実質GDP季節調整値は景気の谷の20年4~6月期501.4兆円を底に、振れを伴いつつ持ち直し傾向で21年10~12月期540.2兆円となった。差額をとると、20年4~6月期から21年10~12期まで戻した額は38.8兆円である。今回コロナ禍前のピークが、第1次速報値での19年4~6月期から7~9月期に戻った。19年7~9月期557.6兆円から谷までの下落分56.2兆円を、21年10~12月期時点で69.1%戻した格好になっている。

 

●マイナス成長の可能性もある22年1~3月期の実質GDPが、仮に前期比+3.0%の高成長になっても、22年1~3月期は556.4兆円にとどまる。コロナ禍前のピークである557.6兆円を越えるのは22年度に入ってからになるとみられる。

 

●10~12月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比+0.3%、前期比年率+1.4%となり、第1次速報値の前期比+0.5%、前期比年率+2.0%から下方修正となった。名目GDPの季節調整値は540.7兆円で直近の景気の谷だった20年4~6月期の512.5兆円と比較すると28.2兆円高い水準だが、コロナ禍前のピークだった19年4~6月期の562.6兆円と比べると21.8兆円低い水準である。

 

●10~12月期の実質個人消費・前期比は、第1次速報値の+2.7%から前期比+2.4%へと0.3ポイント下方修正となった。耐久財が第1次速報値の実質前期比+9.7%から第2次速報値で+8.9%へと大きく低下したことが影響しているようだ。第2次速報値で、輸送機械に加法型異常値処理のダミー変数を設定した影響が出た可能性があるとみられる。

 

●10~12月期の実質住宅投資は、第1次速報値の前期比▲0.9%から前期比▲1.0%へと0.1ポイント下方修正となった。

 

●10~12月期の実質設備投資・前期比は第1次速報値の+0.4%から前期比+0.3%へと0.1ポイント下方修正となった。設備投資は、法人企業統計から単純に計算すると+5.2%だった需要サイドの名目原系列前期比が+3.0%となっている。差が出た理由は、断層補正の影響の可能性が大きそうだ。断層補正は規模別でおこなっているので、中堅・中小のところで、大きく割り引かれて、下振れた感じがする。

 

●10~12月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.1%と第1次速報値の▲0.1%と変わらなかった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度▲0.1%で第1次速報値▲0.0%から0.1ポイント下方修正となった。流通品在庫は前期比寄与度0.0%で第1次速報値の+0.1%から0.1ポイント下方修正となった。法人企業統計を使って推計された原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の▲0.0%から0.0%になった。同じく仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は第1次速報値では▲0.1%だったが第2次速報値でも▲0.1%だった。

 

●10~12月期実質政府最終消費支出は前期比▲0.4%で第1次速報値の▲0.3%から0.1ポイント下方修正となった。また、10~12月期実質公共投資は第1次速報値の▲3.3%から▲3.8%に下方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%で第1次速報値の0.0%と変わらなかった。公的需要全体の前期比寄与度▲0.3%で第1次速報値▲0.2%から下方修正になった。

 

●10~12月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値の+0.2%と同じ+0.2%になった。実質輸出の前期比+0.9%で第1次速報値の+1.0%から0.1ポイント下方修正となったが、控除項目の実質輸入の前期比が▲0.4%と第1次速報値の▲0.3%から0.1ポイント下方修正となった。

 

●10~12月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.9%で第1次速報値の▲0.9%と同じであった。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.4%で第1次速報値の+0.4%から変わらなかった。

 

●10~12月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は0.0%であったが、第2次速報値では同0.0%と変わらなかった。この内訳に関しては雰囲気しか教えてもらえないが、第1次速報値では4項目で一番大きなマイナス寄与は流通在庫、次のマイナス寄与は原材料在庫、そして仕掛品在庫がプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだった。第2次速報値では4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次に大きなマイナス寄与は仕掛品在庫で、原材料在庫はプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだった。仕掛品在庫と原材料在庫は第1次速報値と第2次速報値では符号が変わった。

 

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、1~3月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲334億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は+1,598億円である。

 

●政府の「令和4年度の経済見通し」の21年度実質GDP成長率実績見込み・前年度比+2.6%を達成するには、21年度残り1四半期・1~3月期で前期比年率+3.1%(前期比+0.77%)が必要であるが、1~3月期はまん延防止等重点措置が発令され、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が急騰したなどのマイナス要因があり、達成は難しいだろう。20年度から21年度へのゲタは+1.7%である。なお、21年度残り1四半期が前期比+0.5%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.5%になる。21年度残り1四半期が前期比9.0%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.4%になる。

 

 

●5月18日に公表される1~3月期の実質GDP第1次速報値を1月分のデータから考察してみる。

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1月分対10~12月平均比は▲1.2%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.1%の減少だ。商業販売額指数・小売業の1月分対10~12月平均比は▲2.3%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10~12月期から1~3月期へのゲタは▲0.9%のマイナスである。乗用車販売台数の1月分対10~12月平均比は+2.2%の増加である。まん延防止等重点措置が発令されたことで総じて弱めの状況だ。

 

●家計調査と同時に発表される総務省の総消費動向指数は、個人消費の97%に当たる家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって求めたものだ。実質総消費動向指数の10~12月期から1~3月期へのゲタは+0.3%のプラスである。また、需要サイドのデータを使用しないで、財とサービスに関する各種の販売・供給統計から算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)をみると、1月分対10~12月平均比は▲2.5%の減少になっている。総合的に考えると、1~3月期の個人消費は、前期比減少に転じる可能性が大きいとみられる。

 

●設備投資の関連データである資本財出荷指数(除、輸送機械)の1月分対10~12月平均比は+7.4%の増加になった。建設財出荷指数は同+0.9%の増加である。総合的に考えると、供給サイドから推計される1~3月期第1次速報値の実質設備投資は、1月分の供給サイドのデータからみると前期比増加の可能性がある、しっかりしたスタートである。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の1月分対10~12月平均比は+0.7%の増加になった。控除項目の輸入は同+4.7%の増加になっている。1月分のモノ分だけでみると、1~3月期の外需の前期比寄与度はマイナスの可能性が大きいが、サービスの動向や、2月分・3月分のモノの動向次第で前期比寄与度はプラス・マイナスどちらの可能性もある状況だろう。

 

●1~3月期実質GDP第1次速報値は、第6波の影響でまん延防止等重点措置が発令され、またロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格などの上昇の影響で個人消費を中心に弱含むという内容になろうが、今後の動向を注視していく必要があろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年10~12月期実質GDP(第2次速報値)について』を参照)。

 

(2022年3月9日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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