「塾任せにしない」子育てのキーワードに
塾なしでも、勉強をするのは受験生本人ですし、勉強を教えるのは学校の先生やオンラインを含めた教材です。親が家庭教師になるわけではありません。進路や勉強方法に迷ったら、学校の先生の力を借りられます。
「受験は失敗できない、したくない」のは、塾ありも塾なしも同じこと。塾にはプロフェッショナルな講師や知見が集まっていますが、コロナ禍で塾のオンライン化や塾がもつ受験情報の公開など、自宅学習の体制強化は進みました。対抗する学習動画の配信も増えています。もはや、通塾ありきの時代ではなくなってきているのです。
子どもが進路を選択する際、必ず、親のアドバイスは必要になるでしょう。とにかく、しっかりと自分で選択をさせるために、子どもとよく話し合いましょう。親の希望を押しつけていないか、時に自制しながら、不安や迷いを抱える子ども自身が覚悟を決めるまで、丁寧に向き合うことが大切です。
アドバイスは、子どもの成績や性格を一番わかっている親だからこそ、そして、子どもの幸せを一番に考えている親だからこそ、親身になってできるものです。そのアドバイスに、多くの子どもは導かれ、自らの選択をすることになります。成長の過程を親として手助けし、見守っていけることは、子育ての醍醐味です。
反対に、成績を見て進路のアドバイスをする塾の先生は、子どもの将来を見てくれているでしょうか。もちろん親身になって進路の相談に乗ってくれる先生はたくさんいるでしょう。
ただし、その裏には残念ながら偏差値重視という現場の事情があります。塾の知名度アップにつながる受験や進路を勧められる場合もあるでしょう。塾は「合格実績」という成果を求めています。そうなると勧められた選択は、必ずしも我が子の幸せにつながるとは限らないのです。
本連載は、塾なし受験を勧めていますが、塾に通うメリットは当然あります。塾は、子どもがいきたいと望むのであれば、いかせる親がほとんどでしょう。中学生になって、部活と勉強を両立させるのは大変だからと、自ら塾にいくことを望む子どももいます。中学の勉強が心配だからと信頼する親に勧められ、塾にいく子どももいるでしょう。
どちらも子どもの進路や中学生活を考えてのこと。プロの力を借りることは当然、選択肢のひとつです。ただ、中学受験や大学受験とは異なり、高校受験は親の適切なサポートがあれば、塾なしでも受験が可能(だった)という事実をお伝えしたいのです。
今までの話を踏まえて言いますが、もし塾に通っていたとしても、「塾任せにしない」ことが大切。他者にゆだねることなく、親子でしっかり受験に向き合い、乗り越えていきましょう。
押しつけや過干渉はダメですが、無関心もダメです。「塾任せにしない」は、これからの子育てのキーワードになるでしょう。
当たり前に塾にいか(せ)ないでください。塾が我が子に本当に必要なのか、考えてみてください。
塾なし受験は正直、経済的メリットは大きいですが、親の時間やサポート体制のよしあしが勝負の決め手にもなります。それでも、塾なし受験は、これから変化や困難の多い時代を生きていく子どもにとって、たくさんの経験を与えてくれます。乗り越えたときの本人の成長と、家族の絆の強まりは、そうそう簡単に得られるものではありません。
ネット時代の「動画配信+自宅学習」のスタイルが、いっそう塾なし受験への後押しをしてくれるでしょう。「塾なし」高校受験をするには、またとないチャンスなのです
塚松美穂
ライター・教育アドバイザー
学習支援コーディネーター