コロナもUターン転職を考えるきっかけに
■今の仕事を続けていくのかを考える時期でもある
30代といえば大学を卒業して就職してから約10年が経つ頃です。20代は仕事を覚えて自分で動けるようになるのに必死で、先々のことまではまず気が回りません。しかし10年も経つと、部下ができ仕事の幅も広がってきて、自分や周りのことが見えてきます。
自分が社会人になるときに思い描いていたキャリアが築けているか、社内でこのまま出世していけるのか、今の働き方でずっとやっていけるのか、10年先20年先に何が待っているのか……。それらを冷静に考えたとき「転職するという道もあるのではないか」「自分の可能性を試してみるのも悪くないのでは」という考えが浮かぶのです。
そして転職先の候補に挙がるのが大きく分けて都会か地元かです。都会の転職なら年収アップ、キャリアアップはできそうですが、一方で地元の企業は情報が少なく、転職後のイメージをうまく描くことができません。転職を意識してはじめて、地元にはどんな企業があるのかと思い、ネットなどで調べだす、というのが最初のきっかけとして多いようです。
■大きな災害・経済危機をきっかけに人生を考え直す人も
Uターン転職は、大震災やリーマンショック、コロナショックのような景気の落ち込みがあると希望者が増えるという傾向もあります。2011年3月に発生した東日本大震災のときもそうでした。
私は甲信越(山梨・長野・新潟)、北陸(富山・石川・福井)、群馬を拠点としてUターン転職の支援事業をしていますが、震災が落ちついてきた頃に「家族はやっぱり近くで暮らすのが良いと考えるようになった。実家の近くに引っ越すので、地元で仕事を探したい」といった相談を受けることが増えました。
今般の新型コロナウイルスも、多くの人にUターンを考えさせるきっかけになっています。外出自粛のために離れて暮らす家族に気軽に会いに行けない人も多くいます。また、通勤時の満員電車で感染リスクを冒すことへの恐れやリモートワークの普及で出社を問わなくなってきたことなどが、地元に帰ろうという気持ちを後押しする要因となっています。特に小さな子どもがいる家庭ではその傾向が強いようです。
実際、感染症拡大を受けて2020年4月以降は東京圏からの転出が増えており、同年7月には転入者より転出者が増える転出超過を2013年7月以降初めて記録しました(総務省「住民基本台帳人口移動報告2020年〈令和2年〉結果」より)。
江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント