(写真はイメージです/PIXTA)

ロシアのウクライナ侵攻をうけて、西側諸国はロシアに経済・金融制裁を課しました。どれほどの影響が考えられるのか、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が解説します。

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      3――影響度合いの評価

      前節で見たように、「(1)ロシアで供給されるモノ・サービスがどの国・地域で使われているか」、および「(2)ロシアで需要されるモノ・サービスがどの国・地域で生み出されたものか」については特に欧州の結びつきが強いことが分かった。

       

      ここで改めて、図表2の数値の意味を考えて見る。これは「ロシアからの供給が完全にとまった際、各国・地域でのどれだけのモノ・サービスが利用できなくなるか(最終需要がどれだけ減るか)を示している」と解釈できる。

       

      例えば、ユーロ圏では経済規模対比で0.71%の最終需要が減ることになる。今回の経済・金融制裁でロシアの供給が完全にとまることは考えにくいが、仮にロシアの全産業で一律に10%の供給が止まったとすると、ロシアからの供給量が10分の1に減るため、例えばユーロ圏では経済対比0.071%の最終需要が減る、と解釈できることになる。

       

      ただし、「反作用」の定量評価としては過小評価である可能性が高い点に留意する必要がある。

       

      例えば、マクロ経済理論では負の供給ショックは物価上昇と生産量の減少をもたらすとされる。冒頭でも少し触れた通り、すでに高インフレの影響は懸念されているが、今回はそうした影響を分析したわけではなく、2018年の経済構造(各国間の産業のつながり)を調べているにすぎない。金融取引(国際与信、対外直接投資など)が減少することによる影響も加味されていない。

       

      他にも、コロナショックで明らかになったように、電線(ワイヤーハーネス)や半導体などの部品不足が自動車などの川下の最終財生産を止めてしまうことがある。自動車の価格(付加価値)から見れば不足部品の価格(付加価値)はごくわずかだが、途中の生産工程が止まり最終需要は急減しうる。つまり、供給不足の影響は川上の影響より川下の影響が大きくなっている可能性が指摘できるだろう。

       

      最後の影響については、例えば供給網の上流に位置するほど下流の最終消費への影響度が増すとして、ウエイトを付けて計算すると図表5のようになる4(図表5)。ウエイトの付け方を変えれば影響度合いも変わるが、いずれにせよ欧州経済への影響は他国・地域よりも大きいことが示唆される。

       

      [図表5]ロシアの供給減による各国・地域への影響度(上流度を加味した試算)
      [図表6]ロシアの原油・天然ガス輸出量(相手先別、20-21年)

       

      以上、ロシア経済の鈍化による他国・地域への影響を見てきた。図表5からは影響度は欧州や韓国、中国で大きいことが分かる。端的にはこれらの国がロシアからエネルギー供給を大きく受けていることを反映している(図表6)。

       

      ただし、これも冒頭で触れたが、経済・金融制裁によって産業連関構造が大きく変化し、例えば制裁国である西側諸国とのつながりは縮小する一方で、それ以外の地域、例えば中国などとのつながりはむしろ拡大する(ロシアからの供給が増える)といった変化が想定される点には留意する必要があるだろう。

       

      4 (上流度を加味した国・産業別の(1)の金額の列ベクトル)=(最終需要率の対角行列)×(ゴーシュ逆行列(の転置)の2乗)×(付加価値の列ベクトルのうちロシア分)として算出している。これは、(生産金額の列ベクトル)=(B)×(生産金額の列ベクトル)+(付加価値の列ベクトル)として、係数行列Bを定義し、単位行列IとBを用いて(ゴーシュ逆行列)=(I-B)-1となるようにBを定義すれば、((1)の金額の列ベクトル)=(最終需要率の対角行列)×「(I+B2+B3+B4+…)」×(付加価値の列ベクトルのうちロシア分)と変形できる。上流度を加味した(1)の金額の列ベクトルは「」の中身を(I+2B2+3B3+4B4…)とウエイトをつけたものになっている。

       

      高山 武士

      ニッセイ基礎研究所

       

       

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        ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
        ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月9日に公開したレポートを転載したものです。

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