(※写真はイメージです/PIXTA)

教育への関心が高まり、小学校低学年からの塾通いも珍しくない時代となりました。ただし一口に「塾」といっても、学習サービスの内容や質はかなり大きな差があります。「大手の塾なら安心」「とりあえず通わせるだけでも、少しは学力がつくだろう」と気軽に考える保護者も少なくありませんが、残念ながら実態はそうではないようです。塾講師として実際に指導している花咲スクール代表・大坪智幸氏が、塾業界の現状を解説します。

インスタント講師とプロ講師では、授業力の差は歴然

私自身これまでにいくつかの塾で講師を経験し、同業他社の責任者から話を聞き、他社主催の勉強会に多々参加してきましたが、こうした大手塾ではアルバイト講師に授業研修を行うようなところはほとんどありません。講師が有名大学出身で優秀だから、ではもちろんなく、単に研修の人件費が塾の利益率に影響するからです(普通、経営の観点からしたら、最長で4年で退職するインスタント講師に経営資源を割くのはまったくのナンセンスです)。

 

特に集団授業では、講師の授業力によって学習効果には大差が出ます。インスタント講師とプロ講師では、授業力の差は歴然です。

 

インスタント講師たちは、本部が作ったシステムに則ってただ授業を行うだけです。授業中もただテキストと板書のホワイトボードしか見ていませんし、使用するテキストも特別なものではありません。

 

大手塾の本部は、学校のテストの成績を上げれば、生徒や保護者から文句は出ない、ということを学習済みです。そこで補習を中心とした塾は、学校準拠のワークか何かを授業時間の終わりまで、ずっとやっているはずです。学校準拠のワークは大変よくできています。教材会社の方々は非常に勉強熱心ですばらしいテキストを作成されています。それをきちんと読みさえすれば、理解が進むようにできています。しかし、テキストを順に読むだけでいいのであれば、高い受講料を払って塾に通わなくても、学習に向かう環境さえあれば、家でもできてしまいます。

 

ちょうどコロナ禍によって、そういう講師の質の低さが、一部で明らかになりました。訓練もされていないアルバイト講師による遠隔授業を横で見ていた保護者が、あまりの質の低さに激怒したのです。「こんなものに何万円も払っているのか? 今すぐ辞めさせろ!」と言い放ったという話は、業界内でもあっという間に拡散しました。それが1つや2つの教室で起こっていることではないのです。

 

そもそも「~師」という仕事は何の知識も資格ももたない人間にはできない、させてはいけないという意識は皆もっているはずなのに、塾の講師は例外なのはなぜか、そろそろ気づかなければならないときが来ています。

 

それに対してプロの講師がどういう授業をしているか。説明の内容が分かりやすい、板書がきれい。それは当然で授業力以前の問題です。

 

本当に授業力が高い講師は、集団授業であっても生徒一人ひとりに目配りができています。そして生徒の表情や学習態度から理解度を把握し、その場その場で適切な解説量やスピード、発問のレベルなどを細かく調整しています。

 

子どもの質問にどう答えるかも、力の差が表れるところです。聞かれてすぐに答えを与えてしまうのは、素人講師のすることです。プロは子ども自身が調べたり考えたりする時間を織り込んで、適切なタイミングでフォローをしています。

 

もちろんインスタント講師たちは、大きく変革した教科書や入試についての知識もまったく不足しています。大学受験から逆算し、教科等横断的な思考力を鍛える授業など、できるはずもないのはいうまでもありません。

次ページでは、最近人気の「個別指導」はどうか?

※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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