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斜線制限の適用除外制度…空を広く捉える「天空率」
2003年、建築基準法の改正により、斜線制限の適用除外制度として「天空率」という新基準が加わわりました。この天空率の導入により、斜線制限エリアの設計自由度は劇的に向上することになったのです。
天空率を採用した設計の場合、従来の斜線制限に基づく設計より階高を高くでき、最上階の天井(建物の屋上部分)を平坦に仕上げることもできるのです。ただし、天空率を採用するには条件があります。
それは従来の斜線制限に基づく設計と同等、またはそれ以上の日照・通風・採光を確保できる設計に仕上げることです。日照・通風・採光の確保率=天空率であり、天空率は以下の計算式で算出することができます。
天空率 = (As - Ab) ÷ As
「As」は地上に描かれた円(魚眼レンズのような半球)、「Ab」はAs上にかかる建物の影(投影)になります。この計算式は建物の影が円の中にかかっていない部分、すなわち地上から建物を見上げた時に空が抜けて見える部分の面積を導き出すものです。
「空が見える面積が広い=天空率が大きい」ということは「地上部の日照・通風・採光が確保されている」ということになり、この数値が従来の斜線制限に基づく設計から得られた面積割合と同等、またはより大きければ天空率を採用しても良いことになっているのです。
天空率により、設計プランは柔軟で自由度の高いものに
天空率を採用した建築物は、東京都港区のファッションビル「Ao(アオ)」や、グッドデザイン賞を受賞した千代田区のエンターテインメントビル「神保町シアタービル」などが知られています。
前者は階層が高くなるにつれて床面積が緩やかに大きくなっていくデザイン、後者は三角形の巨大な鉄壁を無造作に組み合わせたデザインで、天空率の優位性を存分に活用した造りとなっています。
天空率による設計が認められたことにより、建物上部を斜めにカットするだけのデザインから、まるで子どもが積み木で遊ぶように自由で伸びやかな建物設計が可能となったのです。しかし、形状が複雑になればなるほど設計プランは複雑になっていきます。どこまで理想を追求し叶えていくかは設計士の力量次第になります。
今後は既存の街並みとの調和も課題に
斜線制限に基づいた設計ではデザインが画一的であり、階高も低く抑えられてしまうため、2003年の法改正で「天空率」という新基準が導入されることになりました。斜線制限に基づいた建物設計と比べて空が見える面積が同じ程度またはより広ければ、天空率による設計で建物を造ることができます。
天空率の導入は、大手デベロッパーが都市開発を容易にするため政府と共に準備を進めてきたものです。天空率によって設計の自由度は増しましたが、歴史ある街並みが残る都心部では「街の風情が高層ビルに壊される」と地元商店会から受け入れられず、予定していたデザインで建てられなかった事例も発生しています。
このような動きは乱開発を避けたい他地域へ波及し、天空率をクリアしたものの地域独自の「高さ制限」に阻まれてしまうケースも増えています。高層建物は今後、既存の街並みとの調和や融合も鑑みながら設計プランを立てていく必要がありそうです。
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