危なっかしい部下にはつい手を差し伸べたくなりますし、チームに厳しい要求を出して嫌われるのはつらいもの。しかし、チームをまとめて組織を浴していくためには、いくつか覚悟を決めなければいけないこともあります。人間関係作りの視点から、脳神経外科医として活躍する筆者が解説します。

他人からの「ノー」は、成長の機会だと受け止めよう

人の目を気にし過ぎていると、自分が何を目的としてやっているのかが分からなくなってしまいます。そうなると少しでもミスをしたらもうだめだと思うとか、ちょっとでもつらい思いをしたら諦めたくなってしまうなど、物事を続けていくのが難しくなります。当然、物事を途中で諦めればどんなことでも成功には至りません。

 

人が嫌がることを言わないとか、人から喜ばれる行動をするのは大切なことですが「人から嫌われないように」ということばかりを気にしていると本質を見失ってしまうのです。

 

「ノー」と言ってくれる人は貴重な存在です。人から否定されたら誰だっていい気持ちはしませんが、もしも何か問題があるのだとしたら、それを指摘してもらうことで大きな失敗をする前に防ぐことができるのです。

 

ですから、他人から「ノー」と言われたときはまずはその理由をきちんと聞き、しっかり受け止めることが大事です。

 

理由のない全否定は聞いても仕方がないため受け流すしかありませんが、きちんと理由があるのであれば、それは自分の成長の機会なのです。こちらのことを真摯に考えてくれる相手は、「ノー」と言う理由もきちんと説明してくれるはずです。

 

元野球選手のイチロー氏は、ウェブ動画のインタビューで「他人から嫌われるのは怖くないですか?」と聞かれて、こう答えています。

 

「僕は他人から嫌われるの大好きですよ。大好き。その人たちは僕に対するエネルギーが半端ないでしょう。興味がないことが一番辛いですよ、僕にとっては。無関心が一番辛いですよ。大嫌いと言われたら、ゾクゾクしますよ、僕

 

※ SMBC日興証券株式会社 WEB動画「おしえて! イチロー先生」2020/06/23

 

なんともタフな言葉ですが、確かに人からまったく興味をもたれないことのほうがつらいかもしれません。「人から嫌われることを恐れない」という境地に達するのは難しいことですが、このイチロー氏のように「自分を嫌っている人は、自分に対するエネルギーが半端ない」とポジティブに考えてみるのも一つの方法です。

 

考えてみれば、どんなに努力しても職場やチームの全員から好かれるということはまずないはずです。どんな場所でも、自分と合う人もいれば自分と合わない人も必ずいるのが自然なことです。

 

もしも自分が全員から好かれていると思っているとしたら、それはたぶん間違った自己イメージですから、むしろ周りにいる人とは上辺だけの付き合いをしているのかもしれないのです。

 

どんなことでも10人いたら1人は必ず反対するなどといわれますが、それも当然だと思います。むしろ全員が大賛成というときこそ、自分が無理やり言わせているのではないか、皆のやる気が落ちていないかなどに気をつけなければいけません。

 

一人や二人、自分の意見に反対する人がいたとしても、それは当然のことです。むしろ、自分が気づかなかったことに気づかせてもらえるチャンスだととらえればいいのです。

 

特に、上に立つ人間やリーダーは人から好かれることを期待してはいけません。

 

僕はボトムアップで現場の人の意見を聞くようにしていますが、すべてを活かせるわけではありません。この意見は採用できるが、これは採用できないなど、取捨選択しなければいけないわけですから、上に立つ人間やリーダーは嫌われて当然です。また、職員のためと思ってやったことでも、いつも拍手喝采で喜んでもらえるとは限りません。

 

でも、いくら嫌われたとしても現場の人が力を発揮できるように尽くす必要があるのです。どんなに孤独であっても、いくら嫌われても、自分の軸をもち続けることが大事なのです。

 

 

 

郭 樟吾

脳神経外科東横浜病院 副院長

 

 

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郭 樟吾

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