(写真はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻と各国からの経済・金融制裁を受けて、世界の市場が大きく変動しています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が2月の市場動向・金融政策についてみていきます。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    大きく変動した2月の金融・商品市場

     

    さて、こうした状況を受けて、2月の金融市場や商品市場は大きく変動している。

     

    まず、ロシアの株や為替の動きを見ると、金融制裁が厳しいことからいずれも大きく下落した[図表5]
    ※ ただし、モスクワ証券取引所では、厳しい制裁を課された直後の28日は株式市場が開かれなかった。

     

    [図表5]ロシアの株価指数と為替レート
    [図表5]ロシアの株価指数と為替レート

     

    地政学的なリスクという点からは、ウクライナと地理的に近いハンガリーやオーストリア、ポーランドにも影響が及んでいる[前掲図表1、後掲図表12・14]。

     

    さらに、金融制裁によって資金繰りが困難になるとの懸念から、長期金利が急上昇、破綻確率(CDS)も上昇している[図表6]。

     

    [図表6]ロシアの長期金利とCDS
    [図表6]ロシアの長期金利とCDS

     

    格付け機関でもロシアの長期外貨建て格付けを引き下げる動きが見られ、S&Pは投機的格付け(BB+)に引き下げている
    ※ ムーディーズは投資適格級(Baa3)だが引下げ方向で見直すと発表している(MOODY’S,Rating Action:Moody's places Russia's Baa3 ratings and Ukraine's B3 ratings on review for downgrade,2022-2-25、2022年3月1日アクセス)。フィッチは投資適格級(BBB)。

     

    ロシア外への波及への潜在的な大きさを評価するために、ロシアの対外債務残高を確認すると、21年9月末時点で約4900億ドルとなっており、G20の中では少ない方と言える[図表7]。

     

    [図表7]G20各国の対外債務残高(21年9月末時点)
    [図表7]G20各国の対外債務残高(21年9月末時点)

     

    2014年のクリミア併合までは増加基調にあったものの、その後は減少、横ばい圏での動きが続いていた[図表8]。

     

    [図表8]ロシアの対外債務残高推移
    [図表8]ロシアの対外債務残高推移

     

    対外債務のうち、制裁国(西側諸国)のシェアは不明だが、BISが取りまとめている主要国による与信側の統計を見ると、フランスやイタリアといった欧州の国の残高が大きく、これらの国では不良債権が増えることによる金融システム機能の悪化も懸念される[図表9]。

     

    [図表9]ロシアへの国際与信残高
    [図表9]ロシアへの国際与信残高

     

    対外債務の規模は際立って大きいわけではないが、金融制裁が長期化すれば不良債権化するリスクはかなり高まる。株式など資本性の資金として流入しているものも含め金融システムリスクは過小評価できないものと見られる。

     

    また、ロシア産商品の価格も上昇している。代表的な商品としては、エネルギー(原油・天然ガス)やロシアやウクライナの主要穀物である小麦が挙げられる[図表10]。

     

    [図表10]原油価格と小麦価格
    [図表10]原油価格と小麦価格

     

    このほか、ロシア生産のシェアが大きい金属のパラジウムなど、半導体生産に必要な資源が不足するとの懸念も指摘されている
    ※ ロイター(22年2月14日)「焦点:ウクライナ情勢、半導体製造に影米が供給網の多様化模索」(2022年3月1日アクセス)

     

    ウクライナ情勢は先が見通しにくい状況で、またロシア側による経済的・軍事的な追加行動の可能性もあるため、市場は不安定な状況が続くだろう。
     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月1日に公開したレポートを転載したものです。

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