風邪の10~15%は、4種類のコロナウイルスが原因
今回は、新型コロナウイルスを含むコロナウイルスの話です。インフルエンザウイルスと同様に、コロナウイルスも多くの種類が存在し、人間を含めたさまざまな哺乳類や鳥類に感染します。イヌやネコ、ブタに感染するコロナウイルスも存在します。
人間に感染するコロナウイルスは、新型コロナウイルスが出現するまでは6種類が知られていました。このうちの4種類(ヒトコロナウイルス229E、NL63、HKU1、OC43)は、いわゆる風邪の原因となるコロナウイルスです。風邪の10~15%(流行期には35%)は、これら4種類のコロナウイルスによって引き起こされます。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子どもは6歳までに感染を経験します。多くの感染者は軽症ですみますが、高熱を引き起こすこともあります。
人間に感染するコロナウイルスは1960年代から知られていましたが、風邪の症状しか起こさないということで、あまり研究されてきませんでした。
むしろ動物に感染するコロナウイルスに問題になるものがあり、そちらが研究されていました。ブタに感染する豚流行性下痢ウイルスは2013年に日本で大流行し、37万頭のブタが死亡しました。また、猫伝染性腹膜炎ウイルスは、1歳未満の子ネコが感染するとほぼ100%死亡するという恐ろしいウイルスです。これらはみな、コロナウイルスなのです。
新しいコロナウイルスによるアウトブレイクが発生
「ただの風邪ウイルス」と思われていた人間に感染するコロナウイルスに対する認識が一変したのは、21世紀に入ってからです。致死率の高い新しいコロナウイルスである、SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスによるアウトブレイクが突如として発生したのです。
2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ばれる感染症が中国南部の広東省で出現して、北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に32の地域や国々へ拡大し、約8000人が感染しました。
その症状は、感染から2~7日後に38℃以上の急な発熱、咳、全身のだるさ、筋肉痛などインフルエンザのような症状が現れ、その後に乾いた咳や呼吸困難、下痢などが続いて、肺炎を発症するというものでした。
患者の80~90%は1週間程度で回復しましたが、10~20%は人工呼吸器をつけるほどまで肺炎が重症化し、患者の約10%に当たる774人が死亡しました。患者から新型のコロナウイルスが分離され、SARSコロナウイルスと命名されました。2003年夏の終息以降、数件の単発発生が報告されているものの、大規模な再流行は起こっていません。
一方、中東呼吸器症候群(MERS)は2012年にサウジアラビアで発生しました。2019年11月時点で、世界27か国で約2500人の感染者が報告され、そのうち約850人が死亡しました(死亡率約35%)。死亡率はSARSよりも高いですが、人間同士の間での感染力がSARSより弱いとされています。
感染者は中東地域に居住または渡航歴のある人、あるいはMERS患者との接触歴がある人で、現在でも患者の発生が継続的に報告されています。患者から新たなコロナウイルスが分離され、MERSコロナウイルスと名づけられました。MERSの症状は、感染から2~14日の潜伏期間を経て、発熱、乾いた咳、息切れ、下痢などが現れます。ほとんどの人が肺炎を発症し、病状が進むと人工呼吸器を必要とするほど悪化します。
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