その他 大人の教養
連載感染症時代の新教養「ウイルス」入門【第3回】

「たかが風邪」のはずが…ヒトに牙をむいた〈コロナウイルス〉【東大医科学研究所感染症国際研究センター長・監修】

ウイルス新型コロナウイルス感染症感染症

「たかが風邪」のはずが…ヒトに牙をむいた〈コロナウイルス〉【東大医科学研究所感染症国際研究センター長・監修】

2019年12月以降、瞬く間に世界へ広がった新型コロナウイルス。数種類の存在が知られるコロナウイルスも、以前は「ただの風邪ウイルス」程度の認識でしたが、21世紀に入り、突如として致死率の高いSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスによるアウトブレイクが発生。従来の認識が一変します。※本記事は、川口寧氏監修の書籍『感染症時代の新教養 「ウイルス」入門』(実務教育出版)を抜粋し、再編集したものです。

風邪の10~15%は、4種類のコロナウイルスが原因

今回は、新型コロナウイルスを含むコロナウイルスの話です。インフルエンザウイルスと同様に、コロナウイルスも多くの種類が存在し、人間を含めたさまざまな哺乳類や鳥類に感染します。イヌやネコ、ブタに感染するコロナウイルスも存在します。

 

人間に感染するコロナウイルスは、新型コロナウイルスが出現するまでは6種類が知られていました。このうちの4種類(ヒトコロナウイルス229E、NL63、HKU1、OC43)は、いわゆる風邪の原因となるコロナウイルスです。風邪の10~15%(流行期には35%)は、これら4種類のコロナウイルスによって引き起こされます。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子どもは6歳までに感染を経験します。多くの感染者は軽症ですみますが、高熱を引き起こすこともあります。

 

人間に感染するコロナウイルスは1960年代から知られていましたが、風邪の症状しか起こさないということで、あまり研究されてきませんでした。

 

むしろ動物に感染するコロナウイルスに問題になるものがあり、そちらが研究されていました。ブタに感染する豚流行性下痢ウイルスは2013年に日本で大流行し、37万頭のブタが死亡しました。また、猫伝染性腹膜炎ウイルスは、1歳未満の子ネコが感染するとほぼ100%死亡するという恐ろしいウイルスです。これらはみな、コロナウイルスなのです。

新しいコロナウイルスによるアウトブレイクが発生

「ただの風邪ウイルス」と思われていた人間に感染するコロナウイルスに対する認識が一変したのは、21世紀に入ってからです。致死率の高い新しいコロナウイルスである、SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスによるアウトブレイクが突如として発生したのです。

 

2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ばれる感染症が中国南部の広東省で出現して、北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に32の地域や国々へ拡大し、約8000人が感染しました。

 

その症状は、感染から2~7日後に38℃以上の急な発熱、咳、全身のだるさ、筋肉痛などインフルエンザのような症状が現れ、その後に乾いた咳や呼吸困難、下痢などが続いて、肺炎を発症するというものでした。

 

患者の80~90%は1週間程度で回復しましたが、10~20%は人工呼吸器をつけるほどまで肺炎が重症化し、患者の約10%に当たる774人が死亡しました。患者から新型のコロナウイルスが分離され、SARSコロナウイルスと命名されました。2003年夏の終息以降、数件の単発発生が報告されているものの、大規模な再流行は起こっていません。

 

一方、中東呼吸器症候群(MERS)は2012年にサウジアラビアで発生しました。2019年11月時点で、世界27か国で約2500人の感染者が報告され、そのうち約850人が死亡しました(死亡率約35%)。死亡率はSARSよりも高いですが、人間同士の間での感染力がSARSより弱いとされています。

 

[図表1]SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルス

 

感染者は中東地域に居住または渡航歴のある人、あるいはMERS患者との接触歴がある人で、現在でも患者の発生が継続的に報告されています。患者から新たなコロナウイルスが分離され、MERSコロナウイルスと名づけられました。MERSの症状は、感染から2~14日の潜伏期間を経て、発熱、乾いた咳、息切れ、下痢などが現れます。ほとんどの人が肺炎を発症し、病状が進むと人工呼吸器を必要とするほど悪化します。

 

【5/20 関連セミナー開催】
不動産価値創造企業「レーサム」不動産小口化商品、待望の第2弾商品説明会

東京大学医科学研究所感染症国際研究センター長
同研究所感染・免疫部門長/同研究所アジア感染症研究拠点長
 

東京大学大学院博士課程修了、博士(獣医学)取得。専門分野はウイルス学。

「ウイルスがどのように増殖し、病気を引き起こすか?」といったウイルス学の根幹をなす命題に迫る戦略的基礎研究を推進する。また、ウイルスの制圧に直結する新しいワクチンや抗ウイルス剤の開発につなげる橋渡し研究も行う。

2016年テルモ財団賞受賞、2018年小島三郎記念文化賞受賞、2021年野口英世記念医学賞受賞。

一般向け著書・監修書に『ひと目でわかる! ウイルス大解剖(子供の科学サイエンスブックスNEXT)』(誠文堂新光社)、『ネオウイルス学』(共著/集英社)。

著者紹介

連載感染症時代の新教養「ウイルス」入門

※本連載は川口寧氏監修の書籍『感染症時代の新教養「ウイルス」入門』(実務教育出版)を抜粋し、再編集したものです。

感染症時代の新教養 「ウイルス」入門

感染症時代の新教養 「ウイルス」入門

川口 寧 監修

実務教育出版

本書は、「ウイルス」を病気を起こすという悪玉的側面だけでなく、ウイルス感染症が引き起こす社会現象、社会変化が引き起こすウイルス感染症、感染することによって宿主に益をもたらす善玉ウイルス、調教ウイルスによる病気の…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ