1976年、突如発生した「未知の出血熱」
1976年6月末にアフリカ中央部のスーダン南部(現南スーダン)で、その2か月後に隣国ザイール(現コンゴ民主共和国)で、未知の出血熱(重度の出血症状を伴い、しばしば死に至るウイルス性感染症)が突如として発生しました。
ともに数百人が感染し、前者は5割、後者は9割が死亡。その中に患者の治療にあたった医療関係者が多数含まれたことから、衝撃が広がりました。後者ではウイルスが分離され、近くを流れるエボラ川(白い川の意味)にちなんでエボラウイルスと名づけられました。
その後もエボラウイルスが引き起こすエボラ出血熱(必ずしも出血症状を伴わないため、国際的にはエボラウイルス病と称されます)は、中央アフリカ諸国(コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、スーダン、ウガンダ、ガボンなど)の熱帯雨林に近い僻村(へきそん)で小規模なアウトブレイクをくり返しました。
しかし、2014年から2016年にかけて、西アフリカ諸国(シエラレオネ、ギニア、リベリア)の都市部で大規模な流行が発生し、感染者は疑い例も含めて約2万9000人、死亡者約1万1000人(致死率約40%)にのぼる、これまでで最大規模のアウトブレイクとなりました。
その後もコンゴ民主共和国などでアウトブレイクが散発し、またアフリカ大陸以外のスペイン、アメリカ、イタリア、イギリスでも発生が確認されています。幸いにして、日本での発症例はまだありません。
日本の感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)では、症状の重さや病原体の感染力などから、感染症を一類~五類及び指定感染症、新感染症の計7種類に分類しています。エボラ出血熱は痘瘡(天然痘)やペストなどとともに、最高ランクの一類感染症に分類されています。
なお、新型コロナウイルスは2020年2月から2021年2月までの約1年間、指定感染症に指定され、病原性などを考慮して二類感染症相当として扱われていました(2021年2月の法改正で指定感染症から新型インフルエンザ等感染症に変更されています)。適切な治療がなされない場合の致死率は50%から90%、「人類史上もっとも危険なウイルス」とも称されるのが、エボラウイルスです。
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