森林破壊が「新たなパンデミック」を生む
現在も新型コロナウイルス感染症の脅威は続いていますが、今後新たなウイルス性の感染症によるパンデミックが時を置かずに発生する恐れも十分にあります。
2020年10月、各国の科学者が参加する政府間組織「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」は、新型コロナウイルスのように動物から人に感染する人獣共通感染症の危険性を指摘する報告書を公表しました。それによると、哺乳類や鳥類には未知のウイルスが170万種あり、そのうち最大で約83万種が人間に感染する可能性があるといいます。
人獣共通感染症はこれまでに200種類以上が確認されていて、人間の感染症の約6割を占めるとされています。そして、毎年5つ以上の新しい人獣共通感染症が発生していると報告書は指摘しています。
ウイルスが種の壁を越えて人間に感染できるようになった時に、新たな宿主となった人間に重篤な症状をもたらすことが多くあります。そうしたものの中から強い感染力を持つウイルスが出現すれば、新たなパンデミックやアウトブレイクが起こる恐れがあるのです。
新たな人獣共通感染症が増える要因として、報告書は野生生物の取引や森林破壊の拡大などの経済活動による開発の影響を挙げています。生物の多様性を誇る豊かな森林は、同時に未知の病原体の宝庫であるともいえます。
森林を伐採し牧場を作って家畜を放牧したり、野生動物の狩猟を行ったりすれば、病原体を持つ野生動物から人間へ、あるいは家畜から人間へ感染症が媒介される危険性があります。
また、元の生息地を破壊されたコウモリや鳥類などは新たな生息地を求めて都市部に移動します。こうして野生動物と人間の距離が近づくほど、新たなパンデミックをもたらすウイルスも私たちに忍び寄っているのです。

川口 寧
東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター長
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