日本では昔から「高温多湿な気候だから、家には風通しのよさが必要」と、半ば常識のように考えらえてきました。しかし、「換気がスムーズでほこりがたまりにくく、新鮮な空気を取り込める家=隙間風が吹き込む家」ではありません。快適な住環境を維持するには、逆説的に思えるかもしれませんが、住宅の「高気密化」が不可欠なのです。住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏が解説していきます。
高気密住宅を実現するなら「木造」がベスト
高気密・高断熱住宅にしたいのであれば、木造がベストです(『日本の家は「他国と比べて寒すぎる」…後悔しない住まいづくりの基礎知識』参照)。とくに気密性能の確保については、木造と鉄骨造を比較すると、圧倒的に木造が有利です。
筆者が知っている限り、気密性能を売りにしている鉄骨造のハウスメーカーはありません。鉄骨造が気密性能を確保しにくいのは、
①鉄は木より熱による伸縮が大きく気密性能を維持しにくい
②室内側に気密シートを施工する場合、木造のようにタッカー(大きいホチキスのようなもの)で簡単に留められないため施工に手間がかかる
といった理由があると考えられます。
マンションのような鉄筋コンクリート造は気密性能の確保が容易ですが、1~3階建て程度の戸建住宅の場合、木造に比べてコストが高く、よほど大空間を確保したいといったケース以外では、さほど一般的ではないと思います。
施工業者は、気密性能で選びたい
標準で全棟気密測定を行うなど、気密性能にこだわるハウスメーカー・工務店は極めて少数です。それらの気密性能に対してしっかりと取り組んでいる会社であれば、断熱性能が不足していることはないでしょう。
断熱性能の確保より、気密性能の確保の方がはるかに手間がかかるため、気密性能にこだわる会社が断熱性能をおざなりにすることはほとんどないからです。加えて、耐震性能や防蟻等の劣化対策も、ぬかりなく行っている会社が多い印象です。
その点から、気密性能への取り組み姿勢は、工務店・ハウスメーカー選びの重要な選定ポイントになります。工務店・ハウスメーカー選びの際は、
「気密測定は全棟実施していますか?」
「C値の目安はいくつくらいですか?」
と尋ねてみましょう。回答によって、どの程度性能へのこだわりがあるか判断できます。
高橋 彰
住まいるサポート株式会社 代表取締役
住まいるサポート株式会社 代表取締役
一般社団法人日本エネルギーパス協会 広報室長
神奈川県出身。東京大学修士課程(木造建築コース)修了、同大博士課程在学中。千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に「結露のない健康・快適な住まいづくり」のサポートを行っている住まいるサポート株式会社を起業。日本でトップクラスの性能を誇る工務店・ハウスメーカーを厳選して提携し、消費者に無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」や、デザインと高性能を両立する設計を行う建築家のマッチングサービス等を提供。また、横浜市住宅政策課主催のセミナーや毎日新聞社主催のセミナー等、多数のセミナーに登壇、メディアへの出演など、高性能な住まいづくりに関する情報発信に積極的に取り組んでいる。住まいづくりを考えている方々への情報発信を通して、ひとりでも多くの方が、住宅の性能に関する基礎知識を持ち、他の先進国並みに「結露のない健康・快適な家」を普及させることを目標としている。主な著書に、「元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家」(クローバー出版)、「人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい: 建築家と創る高気密・高断熱住宅」(ゴマブックス)など。
●高性能な住まいの相談室:https://sml-support.com/lp
●建築家と創る高気密・高断熱住宅:https://sml-support.com/archicon
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