写真提供:オイカ創造所一級建築士事務所

日本では昔から「高温多湿な気候だから、家には風通しのよさが必要」と、半ば常識のように考えらえてきました。しかし、「換気がスムーズでほこりがたまりにくく、新鮮な空気を取り込める家=隙間風が吹き込む家」ではありません。快適な住環境を維持するには、逆説的に思えるかもしれませんが、住宅の「高気密化」が不可欠なのです。住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏が解説していきます。

日本の住宅には「気密性能についての基準」なし

十分な気密性能を確保することは、居住者の健康、快適性、省エネ、家の耐久性の維持といった観点から非常に重要です。ところが、我が国の住宅の気密性能向上への取り組みは極めて遅れています。残念なことに、施主が相当意識して住まいづくりを進めなければ、十分な気密性能を確保した家を実現することが難しいのが現状なのです。

 

断熱性能は「UA値」という指標で示されますが、それに対して気密性能は「隙間相当面積:C値[cm²/m²]」という値で表されます。C値は、家全体の隙間面積を床面積で除した値で、値が小さいほど高気密であることを示します。

 

たとえば、C値が1.0[cm²/m²]の場合、床面積1m²につき1cm²の隙間がどこかにあるということになりますし、床面積が40坪≒132m²の家の場合ですと、132cm²の隙間があるということになります。ハガキ1枚の面積が148cm²なので、この家の場合、全部で大体ハガキ1枚分程度の隙間があるということです。

 

[図表2]C値(相当隙間面積)

 

前回の記事で、平成11年基準という以前の省エネ基準においては、C値5.0(寒冷地では2.0)というかなり緩い基準があったことや、その後の省エネ基準の改正により、現在の省エネ基準には、気密性能の基準がなくなったことについてはすでに触れたとおりです。

 

つまり、我が国の新築住宅は、どんなに隙間だらけでも、公的な基準がないのですから、一般的にはクレームの対象にはなりません。そのため、ほとんどのハウスメーカー・工務店は、残念ながらきちんとした気密性能を確保できていないのが実情なのです。

気密性能の測定は少し面倒…忌避するメーカーも多い

断熱性能を示すUA値は、設計図書を基に計算で出すことができますが、気密性能のC値は、現地で気密測定機器を使用して測定します。

 

まず、一般的には住宅の換気口をすべて養生テープで目張りしていきます。計画換気に必要な箇所はすべて塞ぎ、不要な隙間を計測するためです。次に、下掲の写真のような測定機器を設定します。この測定器は強力なファンが内蔵されており、室内の空気を外に排出します。

 

作動させると家の中が負圧になるため、家の隙間から外の空気がヒューヒューと入ってきます。そこで室内と室外の圧力差と風量をはかることで、家全体の正確なスキマの大きさやC値を算出するのです。

 

出典:日本住環境株式会社
[図表3]気密測定機器 出典:日本住環境株式会社

 

気密測定を行うタイミングは、「完成気密測定」と「中間気密測定」の2種類があります。「中間気密測定」はクロスやボードが貼られる前の断熱気密層が完成した時点で測定するものです。

 

一般的には、気密測定を全棟実施している会社は、目標としているC値を設定しています。C値が目標値に達さなかった場合、目標のC値になるまで隙間を減らすには、「中間気密測定」を行えば漏気箇所がわかりやすく、補修もしやすくなります。そのため、気密測定を行っている会社は、「中間気密測定」1回だけの会社が多いようです。

 

いずれにしても、気密測定を行って目標値に届かなかった場合は、目標値に達するまで隙間を探し出してつぶす作業を繰り返すわけですから、手間暇がかかります。それもあり、気密測定を全棟実施している住宅会社の割合は極めて少ないのです。

 

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