前回に引き続き、スターバックス社の事例を取り上げます。今回は、同社の「多国間ライセンス契約」を利用した手法を見ていきます。

スターバックスの商標は米国本社のものではない!?

米国ワシントン州シアトルで1971年に開業したスターバックスは、現在、コーヒー製法についての知的財産権や商標権などの無形資産を、米国本社からオランダ法人に移転しています。このオランダ法人は販売会社(各国のスターバックス)にその使用を許諾し、6%のライセンス料を受け取っているのです。

 

イギリスや各国のスターバックスでは、ライセンス料支払いによって利益が圧縮され、現地での法人税課税対象額が減少します。一方でライセンス料を受け取るオランダ法人の法人実効税率は16%という低率に抑えられています。またライセンス料の50%が米国の親会社に支払われるのですが、その支払い分にはオランダでの源泉徴収税は課税されません。

自主的に「納税」を行ったスターバックス社

ただし、このスターバックスの話には顚末があります。

 

同じ米国企業であるマクドナルドのイギリスでの過去3年間の売上が36億ポンド(約6100億円)で納税額8000万ポンド(約140億円)、ケンタッキーフライドチキンの同時期の売上が11億ポンドで納税額は3600万ポンドだったのです。その事実を知らされたこともあり、スターバックスは自主的な納税を行うと発表しました。

 

2013年からの2年間にわたって、イギリスにおける法人税支払いとして合計2000万ポンドの納税を行うこととしたのです。

 

ただ、これはあくまでも自主的な納税です。ここで紹介したスターバックスのグローバル・サプライ・チェーンにまったく違法性はありません。

 

なお、スターバックスは2014年4月、欧州事業の本社機能をオランダのアムステルダムからロンドンに移転することを発表しています。コーヒー豆の焙煎や物流機能はアムステルダムに残しますが、同社によれば、これによる全社の税負担に大きな変化はないとされています。

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

究極のグローバル節税

究極のグローバル節税

古橋 隆之 + GTAC

幻冬舎MC

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