在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性

「第7回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」より

在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性
(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍以降の人口動態について総務省の住民基本台帳移動報告をみると、2014年以降初めて東京23区が転出超過となりました。新型コロナの影響で働き方に変化が生まれるなか、本記事ではニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が、2021年12月にニッセイ基礎研究所が実施した調査結果をもとにコロナ禍以降の「郊外・地方移住」のニーズと今後の見通しについてみていきます。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    職場で在宅勤務制度が導入されていたとしても、実際に郊外や地方へ移住できるかどうかは、在宅勤務の利用頻度によって異なる。例えば、「在宅勤務に変えても自分の業務遂行には支障がなく、ほぼ毎日在宅勤務を実施している」という人であれば、就業規則に定めが無い限り、自分の好きな土地、好きな物件を選んで住むことができる。

     

    しかし、「在宅勤務制度はあるものの、実際には出社しないと作業が困難であり、毎日のように出社している」という人の場合には、職場から遠くに引っ越すことは難しい。

     

    また、単身でなければ移住のハードルは上がる。夫婦共働きの世帯なら、夫婦ともに出社頻度が低くなければ、郊外や地方への移住は難しい。また、子どもが地域の学校や大学へ通学し、対面で授業を受けている場合も、移住はさらに難しくなる。

     

    そこで、上記のニッセイ基礎研究所の調査から、就業者と学生を対象とした、出社と登校頻度に関する回答結果をまとめた(n=1,735)。なお、この調査は20歳代以上を対象としているため、回答者本人の学校の種別は大学や専門学校であり、小中学校や高校等は含まれない。 

     

    まず、これまで緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されていた期間について、実際に出社や登校していた頻度をまとめた結果が図表2である。

     

    [図表2]緊急事態宣言やまん延防止等重点措置発令期間中の出社(登校)頻度
    [図表2]緊急事態宣言やまん延防止等重点措置発令期間中の出社(登校)頻度

     

    全国平均をみると、出社や登校が「週0日」、つまり、ほぼ完全テレワークや完全オンライン受講の割合は10%だった。「週に1~2日」は10.5%、「週に3~4日」は17.3%、「週に5日以上」は半数近い46.5%だった。

     

    緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている期間でさえ、在宅勤務やオンライン授業の制度があっても、ほぼ毎日、出社や登校をしている人が半数近いという結果が分かった。

     

    エリア別にみると、東京圏では「週0日」が16.6%となり、完全テレワークや完全オンライン受講の人が全国平均より約7ポイント高かった。逆に、フル出社・フル登校である「週に5日以上」は38.0%で、全国平均よりも約9ポイント低かった。

     

    京阪神は、全国平均と類似した結果になった。その他の地域では、「週0日」が5.4%、「週に1~2日」は7.7%、「週に3~4日」16.4%で、いずれも全国平均をやや下回った。フル出社・フル登校の「週に5日以上」は53.2%と過半数を占め、全国平均よりも約7ポイント高かった。

     

    次に、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されている期間について尋ねた結果が図表3である。

     

    [図表3]緊急事態宣言やまん延防止等重点措置解除中の出社(登校)頻度
    [図表3]緊急事態宣言やまん延防止等重点措置解除中の出社(登校)頻度

     

    全国平均をみると、出社や登校が「週0日」の完全テレワーク・完全オンライン受講の割合は4.6%で、発令期間よりも低下していた。「週に1~2日」は9%、「週に3~4日」は17.9%だった。「週に5日以上」は過半数の53.4%となり、発令期間から大きく上昇した。感染状況が落ち着いた途端、出社、登校する人が増えていた。この要因については、次章で述べる。

     

    エリア別にみると、東京圏の方が、全国平均に比べて出社・登校頻度が低く、その他の地域は高い傾向にあった。

     

    最後に、新型コロナが収束した後の、本人の希望を尋ねた結果が図表4である。

     

    [図表4]新型コロナ収束後の出社(登校)の頻度に関する希望
    [図表4]新型コロナ収束後の出社(登校)の頻度に関する希望

     

    全国平均では、出社や登校が「週0日」の完全テレワーク・完全オンライン受講を希望する人は5.3%だった。「週に1~2日」は9.7%、「週に3~4日」は21.3%、「週に5日以上」は48.9%となった。

     

    つまり、通勤通学や、職場・大学等の密集による感染リスクが下がれば、完全テレワークや完全オンライン授業を希望する人は1割にも満たず、約半数がフル出社、フル登校を希望していた。

     

    宣言解除期間と同様に、東京圏の方が、全国平均に比べて、希望する出社・登校頻度が低く、その他の地域は高い傾向にあった。

     

    以上のように、コロナ禍収束後においても、週に1日以上の出社・登校を希望する人は、東京圏でも9割以上に上っていた。東京圏での週3日以上出社・登校の希望割合は、合わせて4分の3となった。このような状況であれば、東京から容易に郊外や地方へ移住できる人は一部に留まるだろう
    ※ 株式会社リクルートが2021年8月にインターネット上で実施した地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査によると、東京在住者のうち地方・郊外移住に対して「とても興味がある」と「興味がある」と回答した人は46.6%だった。そのうち「すでに移住先・居住地が確定しており、手続きを進めている」が3.2%、「居住候補の地域を訪れたり、一定期間過ごしてたりしている」が11.8%、「情報収集を進めている」が26.6%だった。

     

    もちろん、この設問は、就業者や学生本人に希望を尋ねたものであり、実際に、感染収束後に企業や大学等がどのような判断をするかはまだ予測できない。

     

    しかし、在宅勤務制度やオンライン授業を導入するかどうかは企業や学校が決定するとしても、それをどれぐらいの頻度で利用するかは、労働者や学生本人に任されているケースも多いと考えられる。本人の希望の頻度を整理しておくことは、今後の移住の見通しを考える上で、意味があるだろう。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月24日に公開したレポートを転載したものです。

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